まち活マガジン No.31 2024年6月号

絶望で切れたつながりを傾聴で紡ぎ直す

15歳から64歳までの「ひきこもり」は推定146万人、「 相談では解決しない」と
絶望する当事者たち。 きわめて難しい支援を粘り強く訪問相談活動(傾聴)し、
人とのつながりを紡ぎ直す人達がいる。

写真提供:認定NPO法人東葛市民後見人の会

Contents.

まち活団体紹介
認定NPO 法人 東葛市民後見人の会 障害者委員会

あびこのおいしいみーつけた!
JUL et SWANユール エ スワン

シニアまち活スタート塾
我孫子を歩いて知る編 報告1

つなぐ人~コーディネーターより


写真提供:認定NPO法人東葛市民後見人の会

 我孫子市で唯一ひきこもりの支援をしている民間団体、認定NPO 法人東葛市民後見人会の障害者委員会の薮下敏さんと久保田友康さんからお話をうかがった。

Q:まずは、「東葛市民後見人の会」についてうかがいます。会の設立はいつでしょうか。

薮下:2010 年7月に東葛6 市の「東京大学市民後見人養成講座」修了生が、任意団体として設立しました。その後、2011 年2 月にNPO法人として法人格を取得しました。さらに、2014年3月には、認定NPO 法人になりました。
 高齢化が進みこれから認知症の高齢者が増えること、また障害をもつ人が親御さんを亡くした後のことを考えると、地域で支援するシステムを作ることが課題だと考える人が東葛地域でも増え、本会の活動につながりました。

Q:お2人が会に関わるようになったきっかけを教えてください。

薮下:知的障害のある子の里親をやっているのですが、18歳以降はどうしたらいいのかと考えていました。そこで東葛地域の市民後見人養成講座を受けたのですが、しっくりとこなくて、2014年に東京大学の「市民後見人養成講座」を受けました。「里子のために」が動機でした。
久保田:企業で働いていて、現役時代は地域と全く関係を持っていませんでした。定年後はどう生きようかと考え、再就職する道もあるけれど、高齢社会で成年後見人がこれから重要になると考えました。また、会社では財務を担っていたので、それを生かせるのではないかとも。定年した年に東大の養成講座を受講して、法律などの知識の他、介護施設にも2日間実習に行き、高齢者の髪の毛を乾かす経験をしたり、消費者センターで高齢者が巻き込まれやすいトラブルについて学びました。薮下さんとは、たまたま東大講座の実習で一緒になり、知り合いました。
 講座修了後に本会に入会しましたが、まだ仕事をしていたので、活動を本格的に始めたのは2020 年になってからです。

Q:障害者委員会がひきこもりの支援を始めたきっかけを教えてください。

薮下:障害者委員会は、僕が入会した2013年にはすでにあり、相談業務をやっていました。相談者は多くなかったので、ベテランの相談員の方が電話相談に切り替え、毎週木曜日9時~ 21時まで電話相談を受け、年100人くらいに対応していました。
 その中にひきこもりの相談もあったのですが、話を聞く以上の支援はできませんでした。そこで、アウトリーチ(訪問相談支援)をしようということになり、1 年かけてそのためのルール作りを行いました。2017年からは我孫子市から公募補助金をもらえるようになり、その予算でひきこもりの人へのアウトリーチを月2回くらいずつ行いました。

右:薮下さん 左:久保田さん

Q:ひきこもりの相談は、何歳くらいの方が多いのでしょうか。

薮下:20 代~ 50 代まで、様々な年代の方がいます。学生時代にひきこもり始めた人が、40代になり、これまで親の世話になってきたけれど将来どうしたらいいのか決める年齢になってくる40 / 70 問題があります。

Q:どのようにアウトリーチを行うのでしょうか。

薮下:2017 年からは我孫子市から公募補助金をもらえるようになり、その予算で行っています。2017年から2022 年までのアウトリーチ件数は37 件、うち終結したのは23 件、合計相談回数は1,229 回になります。
 アウトリーチは個人のお宅を訪ねるので、2 人1 組で行動します。まずはご家族と話し、ひきこもり当事者の状況を理解し、家族力を取り戻してもらうことから始めます。
 具体的な対応は、傾聴です。当事者は、過去のことを責められるのではないかという思いに疲弊しています。自分の過去を話すということは、当事者がトラウマを治癒するために行うことなので、肯定して聞くことで支援します。

Q:NPO法人みんなの広場「風」とともに、まったりサロンいっぽを行っていますね。

薮下:「風」の代表の栗原祐子さんとは、民生委員の仲間です。ひきこもりの人の居場所がないので作りたいが行政からの支援はなく、助成金を申請し続けていました。2020 年4 月から中央ろうきんの助成金をもらえることになり、まったりサロンいっぽを立ち上げました。以来、毎月第4金曜日に行なっています。
 カフェ「風」を会場に、参加者に夕食を出し、食を通した関わりでサロンをつくっていこうと考えました。始める際に設立準備会を3 回やって、20 人以上の支援者が集まりました。
 ところが、始めた年に新型コロナウィルスがはやり始め、7 月頃サロンを中止せざるを得なくなりました。その状況でもやれることをやりたいと、支援者の研修会を毎月やることにしました。月1 回の家族会は、2021 年から始めました。まずは試験的に3回行い、やっぱり必要だということになり、継続することにしました。中央学院大学(当時)の葉山大地先生には、研修や家族会の講師として、立上げの時からご協力いただいています。

薮下:大学は卒業したけれど、就職せずにひきこもって50 代になった男性が、サロンに来るようになりました。その方は、40 代で父親の介護をすることになり、将来への希望を失ったといいます。サロンに来るようになり、過去の自分についていろいろな話をすることで、失っていた過去を取り戻すようになりました。自転車で遠くに行くのが好きだったこと、レコードをたくさん持っていること、多趣味だったことなど。

薮下:コロナ禍は落ち着きましたが、サロンはまだ拡大するのはむずかしいと思います。
 活発ではないけれど、地道にやっていきたいです。家族会は、順調に進んでいます。今年度はこのままの形で進めて、状況を見ながら考えていきたいと思います。

薮下:息子さんが中学3 年生で不登校になり、雨戸を閉めてとじこもり、親との会話がないということで相談を受けました。アウトリーチを始めてから3年後、コンビニで父親のためにお茶を買ってくる、母親が声をかけたところ応えてくれた、父親も交えて久しぶりに3 人で話をしたなどの変化があったといいます。また、息子さんは、「もう勉強はいいから、仕事がしたい」など、自分の気持ちを話してくれるようになったそうです。
 親が子の話を受け止め、子が親の変化を知り、そして親に気づきが生まれる、という繰り返しによって当事者とご家族が変わっていくのを見ることがやりがいです。
久保田:仕事を退職して、活動を再開し、障害者委員会に入りました。薮下さんが助成金の手続きなどで孤軍奮闘していて、その手伝いをするようになりました。会では成年後見活動が本業で、ひきこもり支援は地味な分野とされていました。行政の支援体制もできていない状況の中、薮下さんが試行錯誤してきたことを、中途で辞めるのは残念だと思いました。ひきこもり支援活動がしやすいように、インフラを整備し、当会の2 本柱となるよう手伝うことがやりがいと考えています。アウトリーチ支援相談員養成講座で新しい人も入ってきているので、東葛6 市に活動を広げていけたらと思います。
薮下:久保田さんがいなかったら、継続はむずかしかったと思います。


テークアウトではミルクティーが人気
季節の果実を閉じ込めたコンフィチュール

 手賀沼ふれあいライン沿いに2023 年6月8日にオープンした「ユール・エ・スワン」。フランス紅茶専門店に勤めていた夫の健司さんと、フラワー&アパレルショップに勤務していた妻の聖子さん夫妻が営む「花と紅茶の専門店」だ。健司さんは我孫子出身。「我孫子は文学の街。こだわりを持って生活を楽しんでいる方もいますね」と語る。白樺文学に想いを馳せて製作したオリジナルブレンド「Ealgrey SHIRAKABA」もギフトとして愛用されている。
 パリの街角を思わせる外観から一歩入ると、伸びやかな花々に迎えられる。棚には紅茶を中心とした様々な国からの厳選した茶葉が並び、ガラスの小瓶の蓋を開けて香りを嗅いだり、茶葉の色合いを見たりすることができる。棚の上部にはコンフィチュール(フランス語でジャムの意)が数種類あり、自家製の焼き菓子が置かれている。
 紅茶と焼き菓子を担当する健司さんが大事にしているのは、素材の味わい。「茶葉は農産物なので、産地やシーズンごとに味わいが変わるため、たくさんの茶葉を飲み比べて選びます。ハーブなどをブレンドする場合も、茶葉本来の味を生かしています。コンフィチュールのフルーツも、その時期の旬素材を使っているので、出合いを楽しんで
ください」と語る。焼き菓子は紅茶を引き立てる味を大切にしている。
 果肉感たっぷりのコンフィチュールと厳選素材で作られたスコーンの相性は抜群。紅茶とのセットも販売しており、ブーケと一緒に贈ることもできる。「日常の暮らしのエッセンスとして、お花と紅茶を身近に感じ、取り入れていただけるような店を目指しています。ぜひお気軽にお立ち寄りください」と聖子さん。人へのギフトだけなく、自分にも花一輪、紅茶一杯を贈りたい。

JUL et SWANユール エ スワン

我孫子市若松170-4-103
Tel.080-4408-8787
営業時間/ 11:00 ~ 17:00
      不定休

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自然な形で活けられた花と棚に並んだ紅茶の数々
パリの雰囲気の店頭にて。大塚健司さんと聖子さん夫妻

荒井茂男我孫子市史研究センター

 我孫子は、高度経済成長期に東京のベッドタウンとして、急激に人口が増加しました。小中学校の新設、道路・公園の整備、手賀沼浄化など、昭和40 年代から平成時代は激動の時でした。
 温故知新、14名で我孫子市の歴史と布佐を楽習しました(全3 回、2024 年1 月から3 月)。

1.我孫子市の歩み
 昭和30(1955)年、我孫子町・湖北村・布佐町が合併、昭和45(1970)年7 月市制施行。昭和55(1980)年、人口10 万人。令和2(2020)年、市制50 周年、人口約13.2 万人。
≪主な楽習≫
①実在した東葛市…昭和29(1954)年9月から11月の間、のちに柏市となる。
②ディズニーランドの夢が若松の住宅地に…昭和40(1965)年。
③天王台駅(昭和46 年)駅名の由来…牛頭天王(八坂神社、疫病神)で、今は柴崎神社に合祀。旧柴﨑村には、天王裏、天王谷という小字があった。
④現在の渡し船・小堀の渡しと古利根沼…国が明治40(1907)年から大正9(1920)年に利根川の直線化で、小堀は取手市の飛地となり、市営の渡しが始まる。蛇行の旧川は三日月形の古利根沼として現存。

2.布佐の歴史・文化
①布佐は1300年前から存在…下総国相馬郡六郷の1つ。「布佐」は麻、川で塞ぐに由来。
②和田城跡…伝和田義盛の城、現わだ幼稚園から平和台住宅地までの台地。成田線の開通で消失した。
③江戸時代、水運で繁栄…布佐河岸から松戸までの鮮魚街道の起点に観音堂。
④竹内神社の祭礼、今も熱い…毎年9月、5町内の輪番、最終日の山車4 台の競演は見事。境内にナゾの英文石碑(明治38 年旅順間楽記念で桜樹500本寄付)。
⑤市内最古の布佐小学校(明治6 年)延命寺に開校。
⑥初代栄橋は、町民の寄付で昭和5 年に完成、有料だった。


 市が開催した「地域コーディネーター養成講座」の2期生が誕生しました。市民活動団体や地域組織には属していないけれど、我孫子で何かやってみたい、地域の知り合いを増やしたいと思っている人達です。今年の市民のチカラまつりも、地域コーディネーターに企画委員となってもらい、盛り上げていきたいと思います。
 まずは7月6日(土)に西川正さん(NPO法人ハンズオン埼玉)を講師に、講演とワークショップを企画しています。西川さんは、「お父さんの焼き芋タイム」という事業で全国的に有名な方ですが、日常の中に遊びをうまく取り入れることで、人と人をつなげる名人です。生きづらさを抱える人が増える今、西川さんの力まず、どんな所にも自然体で溶け込むコミュニケーション力は、生きるヒントになると思います。老いも若きも、ぜひご参加ください。(高橋由紀)
施設利用のご案内 我孫子で活動を「みつける」「はじめる」お手伝いをしています。
■開設時間 9:00-21:00
      17時以降は予約のみ開館。17時以降のご予約は2日前までにお願いします。
■休館日  毎月第2・4月曜日 祝日は開館270-1151 我孫子市本町3-1-2 けやきプラザ10階
Tel・Fax 04-7165-4370
https://www.td-f.co.jp/abikosks/
abikosks@themis.ocn.ne.jp
 
まち活マガジン あびこ市民活動ステーション情報紙No.31
発行日:2024年6月1日/発行元:あびこ市民活動ステーション[指定管理者:(株)株式会社東京ドームファシリティーズ]
デザイン・レイアウト/人を通して障害を識るフリーペーパー「gente」編集長 大澤元貴

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