小さなきっかけで人と人とをつなぐ「役割を見つけられる場所」

水品朋子さんは、日常生活の中で自分の役割を見つけられる場所をつくろうと、2023年4月、湖北駅南口に「みんなの居場所ビスケット」をオープンしました。ビスケットでは、利用者が互いに助け合ったり、やりたいワークショップを開催したりしています。ちょっとしたことから自分の居場所を感じられる拠点です。

水品さんは作業療法士として長年病院に勤めました。作業療法をするなかで、これまで当たり前にできていたことができなくなり、今後どうやって生きていこうかと悩む人々を目の当たりにしました。会社では仕事についていけない、家庭では料理がうまくできない、などと悩む人々に対して、院内ではもちろんのこと、院外でも退院後に行える方法を練習したり、支援者につないだりして、サポートしてきました。

しかし、それだけでは、人々の「本当」の悩みに寄り添えていないのでは、という感じを抱いていました。作業療法に取り組み、支援を受けることで、日常生活でできることの多くは回復したのに、社会や家族の中で以前のような関係には戻れず、孤独を感じ、悩んでいる人が多くいることに気づきました。自分らしく生きるためには、少しでも誰かの役に立っているという「役割」を感じられることが大切である、と思うようになりました。そこで、2022年の夏前に退職し、その「役割」を実現できる場所づくりへと動き出しました。市民活動ステーションのコーディネーターを始め、多くの人々の助けを借りて、「みんなの居場所ビスケット」が湖北駅南口に誕生しました。

 ビスケットは、ちょっとしたことから始められる場所です。例えば、好きなときに立ち寄って、話すだけでもよいのです。ちょっとしたことが集まれば、そこに役割ができる。誰かに力を貸したり助けてもらったりできるゆるいつながりができてくる。このような思いを込めてビスケット=「微助っ人」を運営しています。ちょっとしたお願い事などを書いたメモを貼る掲示板(ビスケットボード) が利用者の仲介役を務めます。

互いに助け合うことで自分の役割が生まれます。例えば、これまでに「おとなのための絵本の会」「天使のちいさな産着作りの会」などのワークショップが行われました。それを通じて新たな人とのつながりや役割が生まれることもあります。洋服なおしの店「衣の里」に併設しており、有料ですが、置かれている布、糸などを使って、ミシンや針仕事もできます。さらに、ビスケットに集う人の中から、店番もやってくれる人を募ります。店番と気の合う人が集まってくるので、色々な人にやってもらいたいと考えています。

今、ビスケットは誕生から約1年が経ちました。10~80代と幅広い年代の方が会員登録し、現在の会員数は158人です。徐々に定期的に利用する人も増えてきました。

この先もビスケット(微助っ人)というコンセプトを理解してくれる人が集まり、一人暮らしの人・病後の人・引越してきて知り合いのいない人・誰かのために何かをやってみたい人など、様々な人の居場所であればいいと思います。

取材・文/Annko

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