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【まち活人財たからばこ】田中玲子さんにインタビュー
- 2023/4/1
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- まち活ライター, まち活人財たからばこ
子ども食堂など幅広く市民活動「仲間と一緒だからできる」
我孫子市で10年近く市民活動をしている田中玲子さんは、子ども、教育、防災分野など、大小20もの活動に取り組んでいます。「一人ではできない、仲間と一緒だからできる」と話す田中さん。あびこ子ども食堂、とうかつ草の根フードバンクの活動には、特に力を入れて活動してきました。
2016年春に、声をかけてくれた友人と共に4人で、我孫子駅近くのレンタルスペース「ハコカラ」で、月2回、あびこ子ども食堂を始めました。経済的に大変な家庭の子どもたちだけではなく誰もが行ける、近所のおばちゃんが営む駄菓子屋さんのような場所にしたいと考えて運営しました。寄付してもらった野菜をもとに、みんなでメニューを考えました。ボランティアのシニアの主婦や中学生たちが、調理や配膳を手伝ってくれました。保育園児や小学校低学年くらいの子どもと親など大勢の人たちが来てくれ、食堂の前に行列ができるほどの賑わいでした。
2019年4月からは、我孫子市の施設、けやきプラザ11階にある「手賀沼のうなきちさん家」に移転して続けました。「こども食堂がある週は、それを励みにがんばれる、子どもに優しくできるとお母さんたちが言ってくれて、この活動が役に立っていると実感できました」と田中さんは話します。子ども食堂は近年、全国的に広がってきた取り組み。地域の住民がボランティアで運営しています。子どもだけでも、親子でも、大人だけでも食事をすることができるところが多いです。
我孫子市内に複数の子ども食堂ができ、2017年に市役所職員の声がけで始まった我孫子市子ども食堂ネットワークは、子ども食堂・市役所・社会福祉協議会・地元の企業などが協力し合い、情報交換だけでなく、食材やお金の寄付を受け付ける窓口にもなっています。児童扶養手当や生活保護を受けている子育て世帯に子ども食堂で使える回数券を配布しました。ネットワークで回数券を作って、我孫子市が通知などを送る際に同封して対象の家庭に送り、我孫子市社会福祉協議会の歳末助け合い募金の寄付で回数券の代金を賄うという仕組みです。子ども食堂ではその回数券を一般の方にも販売し、経済的に大変な家庭の人たちだけが持っていて目立つことがないようにしました。
子ども食堂は市内だけでなく、近隣の市とも繋がりができるようになりました。そして、松戸、柏、流山、野田、鎌ヶ谷我孫子の6市のこども食堂ネットワークを母体に、2019年にはとうかつ草の根フードバンクが立ち上がりました。フードバンクでは一般に、集まった食品を必要な人に届ける運送費が重い負担になります。とうかつ草の根フードバンクでは、流山にある代表の自宅の蔵を改装し、企業や団体、個人からの寄付やフードロスで集まった食品を保管し、それぞれの子ども食堂が受け取りに行くようにしました。田中さんは立ち上げメンバーで副代表を務め、我孫子市分の食品を運ぶ役割も担っています。
2020年に新型コロナウィルスの感染が拡大すると、一時的に小学校が休校になって子どもが家にいるため、働きに出られずに経済的に苦しくなる家庭が増えました。会食が制限される中、大勢で賑わう子ども食堂は運営できなくなる一方で、給食などで使われなかったお米や食材などもフードバンクに届いて食品の在庫は増え続けました。そこで、各地のこども食堂では、経済的に大変な家庭に食品を無料配布するフードパントリーという活動を始めました。食品を配るだけなので、子ども食堂とは違って3密は回避できます。あびこ子ども食堂では何回かの試行を経て、2020年11月から毎月1回、活動を続けています。
田中さんの好きなアフリカのことわざに「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という言葉があります。一人で行けば早く行ける。しかし、一人の力では体力的・精神的な限界がある。そんなとき同じ目標に向かって進む仲間がいれば、お互い助け合うことで遠くに行くことができるという仲間の大切さを説いた言葉です。「仲間がそれぞれの得意分野で協力することが大切と感じています。また次も一緒にやろうと言われるのがとても嬉しい、仲間同士で頑張ったことは宝物、私のパワーの源です」田中さんは笑顔で話します。
最近は、超高齢社会体験ゲーム「コミュニティーコーピング」認定ファシリテータ資格を取得しました。高齢社会の課題を一人ひとりが自分ごととしてとらえ、地域資源とつながることで悩みが解消され孤立防止になることが体験できます。この活動を、仲間と一緒に協力して広めたいという田中さん。これからの活躍もとても楽しみです。
(取材・文/東浦聡子)