【取材】市民のチカラまつり2020の参加団体・協力団体を取材しました

 2020年の市民のチカラまつりは、子育て世代のあびじょスタッフにより、参加団体の取材をしました。ここから多世代交流も生まれ、オンラインという初めての取り組みでしたが、新しい繋がりも生まれました。

にこにこ会

にこにこ会 塩澤さん

 「にこにこ会」の塩澤春雄さん(代表)は、会の名前通り、いつも笑顔を絶やさない方です。高齢者施設に芸能を届ける活動を始めたきっかけや、市民のチカラまつりでの出し物についてにお話しをうかがいました。

長寿大学での学びが活動へ

 塩澤さんは、定年退職後は地域のためになることをしたいと、しばらく自治会の仕事をした後、長寿大学に入りました。そして3年生の授業で高齢者施設を訪問して、余興で踊る機会がありました。その時に施設の皆さんにとても喜ばれた経験から、卒業後にもこの活動を継続しようと思い2008年に会を作りました。最初は、長寿大学のOB、知り合いと3人で始めました。元々踊りが好きだったわけではなく、長寿大学に入ってから始めたことですが、今では楽しくやりがいを感じていて、できるだけ長く活動したいと思っているそうです。

 長寿大学は、我孫子市が実施する65歳以上のシニアを対象にした公民館講座です。我孫子市の歴史・文化・地域課題などを4年間学び、学んだことを地域で活かしてシニアライフを充実させることを目的にしています。大学の趣旨通り、福祉を学び、高齢者施設を訪問したことが塩澤さんのその後の地域貢献活動につながりました。

2019年市民のチカラまつりの模様

[活動内容]

 会員は50人ほどで、ボランティアとして施設を訪問するのは15人くらとのことです。訪問施設は市内12ヶ所、会を作った時から10年以上訪問している施設もあり、息の長い活動をしています。

 メンバーはそれぞれが得意な芸を持ち、演目は、演舞、伝統芸能、股旅物、フラダンス、社交ダンスなど、豊富です。練習は月に2回ほど、先生を読んで教わったり、阿波踊りなどは上手なメンバーから教わり、日々研鑽を積んでいるそうです。

 メンバーにとってもやりがいのある施設訪問が、現在はそれがコロナ禍のためにできなくなっているそうです。

2019年市民のチカラまつりの模様

[市民のチカラまつりでやること]

 演歌に合わせて踊る演舞、伝統芸能のどじょうすくいなど、ふだん高齢者施設で行っている演目の中から披露してくれます。これまで訪問してきた施設の皆様に、ぜひ観ていただきたいと思っているそうです。

[活動への思い]

 塩澤さんは、にこにこ会の活動に限らず、人から必要とされること、たとえば道路の清掃でもなんでも率先してやりたいと考えているそうです。「私のからだは、人のために何かをやるようにできている」とも。市民のチカラまつりに参加するのも、それが皆様のためになると思っているからだそうです。心を込めて、塩澤さんとにこにこ会のメンバーが踊る動画を、ぜひ多くの人に見てもらえたらと思います。

 

アンサンブル・ルミエール

指揮の青井先生と當前さん

アンサンブル・ルミエールの當前(とうまえ)一輝さん、伊藤優佳さん、佐藤洸太さん、増田拓未さん、森川月(るな)さん、吉野孝正さんにZOOMでお話を伺いました。

[活動について]

被災した地元に「光」を届けよう

 2013年に布佐中学校の卒業生を中心に結成された合唱団アンサンブル・ルミエール。ルミエールとはフランス語で光という意味です。2011年の東日本大震災では布佐のまちも被災しました。そんな地域の人の心に光を届けようという思いが込められています。おそろいの紺のユニフォームは、創設メンバーである櫻井琴梨さんのデザインです。

 新型コロナの影響で、3月末から練習もままならず、zoomやLINEで連絡を取り合いながら過ぎていった5ヶ月間。それでも、通常練習日である毎週火曜日の夜にzoomを用いて音楽を楽しく学ぶ機会を作り、音楽によるメンバーの繋がりを維持し続けました。全12回のZoomライブはコンサートマスターの當前さんが中心となって、音楽の歴史や合唱曲の鑑賞、さらにはシンガーソングライターとして活躍中の団員のライブ、そして、指揮者の青井眞吾先生による授業など、歌うことに代わる音楽の楽しみによってみんなの心をつなぎました。そして8月、練習再開のためのガイドラインをコンサートマスターが作成し、「近隣センターふさの風」で練習を再開しました。

マスクをしスマホ画面を見ながらの合唱

[思い]

あたたかい心の居場所を守り続ける

 歌を歌う機会は、中学校を卒業するとめっきり減ってしまい、高校生になれば、芸術科目で選択しなければ音楽の授業もありません。

 そんな中、歌や音楽を心から楽しめ、中学時代に同じく青井先生の指揮で音楽活動をしていた仲間なので歳が離れていても共通の音楽的な感覚を共有できる雰囲気をもっているのが、アンサンブル・ルミエールでした。

 さらに、途中でお休みしても、またいつでも行きたくなったら参加できる心のよりどころなのです。

 登録メンバーは40名を超えますが、都合に合わせて、本番は20名前後で臨んでいます。我孫子合唱連盟には比較的年齢層が高い合唱団が多く、だからこそ若い合唱団は期待されています。若い人たちの間に合唱の楽しさが伝わって、我孫子市をもっともっと合唱が盛んなまちにしなければという使命感のようなものも感じます。

 この団の方たちは、合唱が好きで、一つのものをつくりあげて、人を笑顔にできる楽しさを知っています。

 音楽の道を進んでいる人も、部活で陸上に打ち込んでいた人も、大学生も社会人もみんなが心の底から音楽を楽しんでいます。そして、あたたかい心の居場所を守り続けています。

2019年市民のチカラまつりでの合唱
アンサンブル・ルミエールのYouTube動画に接続します

[市民のチカラまつりでやること]

 YouTubeで動画配信をします。曲名は以下の通りです(予定)。ぜひ、ご期待ください。

・線路は続くよどこまでも(アメリカ民謡/佐木敏訳詞/信長貴富編曲)
・夜のうた(阪田寛夫作詞、佐々木伸尚作曲)
・さびしいカシの木(やなせたかし作詞/木下牧子作曲)
・アニーローリー(緒園涼子作詞/J.スコット作曲)
・アンパンマンのマーチ(やなせたかし作詞/三木たかし作曲/石若雅弥編曲)

 

あびこ市民活動ネットワーク

あびこ市民活動ネットワークの宇野さん(左)と多田さん

[役割について]

市民活動団体をつなぎ、“共助”を進める

 「あびこ市民活動ネットワーク」は、我孫子駅南口にあるけやきプラザができた2006年に誕生しました。我孫子市内で市民活動をしている団体や個人がつながり、共通する課題について話し合います。そして我孫子市の市民活動支援の窓口であるあびこ市民活動ステーションなどとも相談して、解決を図るのが目的です。一般企業に業界の連合組織があるように、市民活動にも横のつながりが必要です。

 全体会議のほかに、「子ども応援」「地域包括ケア」「防災」「まちづくり」「市民活動支援」といった分科会があって、担当分野別にも活動しています。

 「いまは国・県・市といった行政がなんでもやってくれる時代ではありません。市民が自ら動いて助け合う“共助”が大切になっています。市民活動はその一環として、頑張らなければならないと思っています」と宇野さん、多田さんは語ります。

あびこ市民活動ネットワーク

[いまの課題]

いちばんはヒトの確保

 市民活動団体には、活動するヒトの確保、カネの確保、活動場所の確保、関連情報の入手などいろいろな課題がありますが、いま多くの団体で一番の課題になっているのは市民活動するヒトの確保、なかでも推進役になる「担い手」の確保だそうです。特に定年を迎えた方々の我孫子でのイキイキライフにぜひ市民活動を加えていただきたい、と思っていらっしゃるそうです。

今年の「市民のチカラまつり」企画

「コロナ時代の市民活動」

 このため、昨年の「市民のチカラまつり」でも、「人生100年、定年後に”30年連休”!」という講演会を開きました。今年も9月26日に「コロナ時代の市民活動」という同じ趣旨の集いをこんどはZoomを使ってオンラインで開きます。

 第1部は「コロナにめげないでいるまでもプロダクティブに」という生涯現役を呼びかける講演を、第2部は「我孫子での“30年連休”をどう過ごす」という定年後をめぐる意見交換会です。この企画は翌27日にLIVE配信されます。

 「市民団体には、素晴らしい活動をしているのに、簡単なホームページすらない団体もあります。必要性は分かっていても、高齢でままならないというのです。より若い世代の方たちにも、こういった分野を含めて、市民活動に参加していただけるとありがたい、と思っています」と、お二方からのメッセージです。「市民のチカラまつり」は、若い世代の方々もぜひ覗いてみてください。

 

我孫子の文化を守る会

我孫子の文化を守る会 越岡さん
我孫子の文化を守る会 村上さん

【活動内容】

「学びと出会いは幸せの一つ」

 郷土史家で街歩きガイドをされている越岡禮子さんと、白樺派の研究をされている村上智雅子さんにお話を伺いました。

 志賀直哉の旧宅跡の保存運動がきっかけで発足し、40周年を迎えた「我孫子の文化を守る会」。年3~4回の史跡文学散歩のほか、放談くらぶ、短歌の会、巨木・名木を訪ねる会、百人一首を楽しむ会等があります。

 国語や歴史の教科書に出てくるような人物や事件と我孫子の関わりについて、次から次へと教えて下さるお二人。お話が面白くて引き込まれます。学生時代に知っていたら、もっと授業が楽しかっただろうと思います。

 その知識の豊かさの原動力は「楽しいから」「好きだから」、そして「同好の士との出会い」があったから。「学びと出会いは幸せの一つ」とのことです。

嘉納治五郎さんの銅像とともに

【活動にかける思い】 

まさに「物語のうまれるまち」我孫子

 手賀沼と利根川にはさまれた丘陵と自然がある我孫子は人をよび、明治時代に入って、飯泉喜雄(名主の長男で後に我孫子町長)が私財を注いで鉄道を誘致したおかげで、上野から一時間半で来られる場所になりました。(現在は40分弱)。

 嘉納治五郎が別荘を建て、そのおかげで、甥の柳宗悦や教え子の村川堅固がきました。そして、柳宗悦は志賀直哉、武者小路実篤、バーナードリーチを呼びました。

 芥川龍之介は志賀直哉を訪問したり、我孫子の各所をスケッチにして残しています。

 『日本百名山』を書いた深田久弥の出発点も我孫子で、柳宗悦邸だった三樹荘に短期間ですが、住んでいました。

 「我孫子に住んだ先人たちは、まだまだ隠れた物語を残しています。自分のふるさとに誇りをもって話せることはすばらしいことです」と越岡さん。「我孫子の文化を守る会は、我孫子の特徴を魅力にアップして、皆さんに知っていただくお手伝いをします。今年は嘉納治五郎像を建てて残すことができました。ご協力いただいた皆様に感謝です」と村上さん。

まち活マガジン第13号で「我孫子の文化を守る会」を特集しています

【市民のチカラまつりでやること】

「我孫子にず~っと住み続けたくなるぶら~り散策」と題したまちあるきを実施

 越岡さん、村上さんからのメッセージです。

「市民のチカラまつりでは、まちあるきをします。『我孫子にず~っと住み続けたくなるぶら~り散策』と題して、嘉納治五郎ゆかりの場所を、解説付きで歩きます。柔道だけでなく、教育者の面や全人的な魅力に触れることができます。市内にはマンションや戸建て住宅も増えてきました。新しく我孫子に来られた方たちも、ぜひまちあるきに参加してみてください!」

 

アシの会

【活動内容】

自身の体調不良をきっかけに、オリジナルのつぼ引き健康法を編み出す

 アシの会主宰の鈴木さんは、約10年前から最新の手技を用いた東洋医学系の健康法に出合い、自身の体調の回復でその効果を実感しています。仕事の傍ら週末に学んだので、学びには約1年かかったそうです。つぼをつまんで引く施術法は十数年前に開発された最新の手技ですが、更に、引いて戻すのは、鈴木さんのオリジナルです。「押すのに加えて、引っ張った分、数倍に効果が大きくなります。人間の皮膚って餅みたいに柔らかくなるんです」と実際につまんで見せてくれる鈴木さん。講座によって不思議なほど元気になりましたが、原理の究明に更に日本の第一人者に6年学びました。整膚普及会を立ち上げ、後にアシの会と名称変更しました。自分で出来るところが、大きな特徴だそうです。

<気付き多面性集中力を養う脳血流アップ体操>
あもの joyful ナンプレ(PDF)

 

【活動にかける思い】

好奇心の中から厳選して実行……

 「理由が分からないと知りたくなる。それが私の好奇心です。強い好奇心を維持するのも健康のうち、で活動しています」と語ります。コロナ禍では、健康の四大要素…血流・リンパの流れ・神経の流れ・筋肉のほぐしの涵養効果で体力や免疫力を向上させるので、有効と考えているそうです。「つぼ引きは、具合の悪いところには効き、なんでもないところでも血流が良くなります」(鈴木さん)。実際の人体図とツボの流れを同時に見せる冊子も編纂し、受講者に提供しています。
 好みの音楽に合わせてゆったり行う「あびセラ体幹ストレッチ」、自分でできる全身ほぐしです。フェイスラインも引き締め、自然の肌色にする「顔のセラ・ストレッチ」も織り込んでいます。また、国民年金・障害基礎年金の請求漏れ防止キャンペーンなども、気づかない人が多いと知り、チラシを作成・配布するなどの活動もしています。

【市民のチカラまつりでやること】

YouTubeでナンプレを配信します

 昨年の出展では、ナンプレをほとんどの人が手探りでやっているとのことでした。5年前にVBAで開発したゲーム支援システムを用いて研究を続け、今年は、体系的で誰にも分かりやすい切り口が特徴の『あものjoyfulナンプレ』(あも:ニックネーム)のテーマでYouTube配信をすることにしました。「ぜひナンプレを楽しんでもらいたい」と鈴木さんはおっしゃっています。ぜひ、初めての方も、やったことがある方も、ご覧ください。

 

新日本婦人の会我孫子支部

日本婦人の会横山さん(左)と新妻さん

【新日本婦人の会って?】

創立58年を迎える女性の会

 新日本婦人の会中央本部が発足したのは1962年のこと。創設メンバーには、女性運動家の平塚らいてうさんや絵本画家のいわさきちひろさん、作家の野上弥生子さんら32名の女性が名を連ねています。今でこそ女性が声を上げる姿は珍しくありませんが、戦後間もない当時、一人の力は弱くても手を携えることで大きな力になると信じた女性がつくった会です。「ポストの数ほど保育所を」「結婚退職や30歳定年制に反対」など、全国で運動を広げ、国際婦人年(75年)を契機に女性の共同が広がりました。2003年には国連NGOになり、世界の女性とも交流・連帯を広げています。

 我孫子支部は、中央本部発足から数年後に誕生し、現在は30代から90代まで幅広い100人超の会員が地域ごとに班に分かれて活動をしています。内容は『新婦人しんぶん』を読んだり、おしゃべりしたり、ときには散歩、映画鑑賞、モノづくり、ヨガ、ダンベル、絵手紙を描くなど多岐に渡り、年に1回秋に開催される会員同士のお楽しみ交流会で一同が顔を合わせます。

 さらに毎月我孫子駅前で核廃絶と憲法を守ろうと呼びかける通称「平和の2署名」をずっと続けているそうです。

活動の様子
活動の様子

 【活動にかける思い】

愚痴だけでは変わらない。やれることはやる

 代表の横山とみさんは1980年代、市民のチカラまつり担当の新妻惠美子さんは35年ぐらい前に入会し、仕事をしながら活動に参加してきました。お二人にとってこの会は「学びたいことや興味のあることを何でも話せる場」(横山さん)「週に1回発行される『新婦人しんぶん』を読んで意見の交換ができる場」(新妻さん)。お二方にとってかけがえのない会であることが伝わってきます。

 現在は、つくし野・湖北台・新木各地区で、放課後や日曜日に小学生の無料勉強会を行っています。対象は原則として『新婦人しんぶん』の購読者と会員です。つくし野では子どもたちの勉強会と同じ時間帯に別室でママたちの懇談会をし、子育ての悩みなどの相談にものっているそうです。

 活動を若い世代につなげるために、親子連れのいるところに行っちゃおう!と公園で絵本を読んだことも。また、昨年まではつくし野地区と湖北・新木地区で夏休み工作教室を開催し、折染や手芸、おもちゃ作りなどに多数の子どもたちが参加しました。木工作の得意な男性も講師を引き受けてくれました。

 「今回のコロナ禍では子どもたちが心配で、子ども支援課に学童や開放教室の様子を聞きに行ったり、教育委員会に要望書を出したりしました」と横山代表。学校再開後も心配事を会員さんのご近所の保護者やお子さん計50人に聞き取りアンケートを実施し、教育委員会に懇談を求める予定です。「愚痴を話してホッとすることもあります。でも愚痴だけでは解決できません。解決に向けて何ができるだろうか、私たちにやれることをやっています」と横山さんと新妻さんは言います。他者のために注がれるエネルギー、差し伸べられる手に、この会の芯の強さを感じます。

【市民のチカラまつりでやること】

中学生の制服・学用品やランドセル・絵本などのリサイクルをします

 市民のチカラまつりでは2017年から小中学生の「制服・学用品リサイクル」を行っています。きっかけとなったのは、若い世代に教育費のアンケートを取ったことでした。「学校にかかる経費で負担に感じるものは?」との問いに対して、教材費、制服、学用品という答えが上位を占めたため、何か力になることは出来ないか、と思ったのだそう。知り合いからの提供だけでは足りないため、中学校の卒業式の朝に「無料リサイクルへの制服・学用品の提供お願い」の内容のチラシをまきました。「卒業式なので急いで入る方もいますが、祖父母の方が声をかけてくださったり、かなり日数が経ってから電話がかかってくることもあります。嬉しいことです」と新妻さん。リサイクルブースに訪れた2人の子ども連れのお母さんが大荷物を抱えるのを見て、横山さんがお宅まで届けたこともあるそうです。

 今年はリサイクル品のリストをホームページに掲載しますので、事前に当ステーションに予約をしてください。9月27日の市民のチカラまつり当日にけやきプラザ2階の第2ギャラリーでお渡しします。必要なものがあればお気軽にお問い合わせください。

 

モノオペラ「焼き場に立つ少年」を次世代に伝える会

モノオペラ「焼き場を立つ少年」を次世代に伝える会 白澤会長

【活動内容】

上演活動・教材で未来へ託す「焼き場に立つ少年」 

 「焼き場に立つ少年」は1989年に公開され、世界中に波紋を広げたモノクロ写真です。原爆投下から約一カ月後の長崎。裸足で直立する少年は息絶えて間もない弟を背負い、火葬の順番を待っています。日本人の撮影を禁じる軍規に背いた米軍カメラマンが撮影し、永らく秘蔵していたものでした。

 写真に衝撃を受けた作曲家、青英権(ひでのり)さんは、1995年から15年の歳月をかけ、少年をモチーフにモノオペラ(一人で演じる歌劇)を作詞作曲。創作のエピソードで少年の人物像を浮かび上がらせ、幼い弟への愛、死を悼む悲痛な心情を描き出しました。2013年に青さんは他界、作品を託された取手市在住のソプラノ歌手、岡本静子さんが同市の「未来を担う子どもたちを応援する心の授業」で歌い始めました。

 「モノオペラ『焼き場に立つ少年』を次世代に伝える会」は岡本さんの知人で市内在住の白澤幸雄さんが中心となり、昨年11月に発足。翌12月、けやきプラザで行われた我孫子市平和事業「平和の集い」で市内初上演を果たしました。折しも、ローマ・カトリック教会・フランシスコ教皇が来日した直後のこと。核兵器廃絶を訴える教皇は少年の写真を「戦争がもたらすもの」として広く紹介しており、同会の活動は新聞にも取り上げられ、話題となりました。

 白澤さんたちは作品のブルーレイディスクを制作し、学校教材化することも目指しています。クラウドファンディングなどによる資金集めを進めながら、まずは我孫子・取手両市の中学校で無料配布し、各地へ広げていく計画です。

モノオペラ「焼き場に立つ少年」の写真を前に歌う岡本さん

【活動のきっかけ】

少年の痛みを感じ、助け合える心を

 1942年生まれの白澤さんには、母親に負ぶわれ戦火を逃れた東京大空襲の記憶があります。活動の根底には常に平和への願いがあり、家族で広島・長崎の被爆地、沖縄のひめゆりの塔に訪れるなどしてきました。60歳で胃がんを発病、完治した際「再び生き延びた命を次世代のために活かそう」とボランティア活動を始めて17年余りです。

 2018年、白澤さんはモノオペラ「焼き場に立つ少年」をどう広めたら良いか思案する岡本さんに相談され、この作品を知ることに。「少年の思いを想像し、解釈をめぐって語り合うことは、戦争について考える良い機会になるのでは……」白澤さんは、すぐさま立ち上がりました。資金集めからPR、会場運営などに奔走する中、活動に賛同する仲間が集まり、8月20日現在の会員数は97人にのぼります。

 茨城県内で小・中学生を対象に「心の授業」を行ってきた岡本さんにも、子どもたちへの切なる願いがあります。「自然現象や災害を含め、次世代には多くの困難が待ち受けていることでしょう。お互いに手を差し伸べられる力こそ、乗り越えるために必要なのです」。「焼き場に立つ少年」が戦争の惨さを伝えるだけに留まらず、助け合う心を育むものとなるよう、全身全霊で歌い続けています。

平和祈念碑前で関係者との記念撮影

【市民のチカラまつりですること】

コロナに屈せず、平和への願いを新たに

 今年5月に予定していたモノオペラ公演は新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑み、やむを得ず延期となっています。「子どもたちの未来のために」という思いから、小・中・高校生を無料招待するもので、来年5月の公演を目指して企画中です。

 上演活動が難しい中、白澤さんの活動意欲はより高まったといいます。「緊急事態の休校など、日常生活が奪われることは戦争時と重なるかのようです。世界には今なお戦争をしている地域があり、ウイルスに脅かされる以上に苦しんでいる人たちがいます。平和を守りたい気持ちはいっそう強くなりました」。

 「市民のチカラまつり」では同イベントのYou tubeチャンネルから、平和学を担当する中央学院大学法学部・川久保文紀教授と卒業生・在学生による対話型シンポジウムを配信。平和都市宣言をしている我孫子市は、毎年8月に中学生の代表者を広島・長崎へ派遣し、戦争や原爆について学ぶ機会を設けており、実際に派遣された学生による報告並びに我孫子市原爆被爆者の会・的山ケイ子会長による被爆者体験談も盛り込まれます。ぜひ若い人たちの声を聞き、平和について考えを深めてみましょう。動画は来年のYouTubeチャンネル更新時まで配信予定です

 

全国友の会我孫子支部

全国友の会我孫子支部 渡辺代表

【活動内容】

家庭から社会に向けて発信を

 家庭の「衣・食・住・家計・子ども」に関するさまざまな事を学び合い、それを社会に還元していこうー全国友の会我孫子支部の皆さんはこの思いで活動をしています。週1回日々の生活の小さな事を学び合い、志を高める読書や勉強の発表会などをしています。小グループでの勉強会では料理、献立の勉強や洋裁などメンバー同士がお互いに教え合い、それぞれの知識を共有しているとのことです。「創立者である羽仁もと子先生の『平和を願って よい家庭からよい社会を』との思いを大事に小さな家庭の中からなにか発信できるものがあればいいなと思いながら活動しています」と渡辺さんは爽やかな笑顔で話してくださいます。

当日はひとひねりあるメニューを作ります.

【活動のきっかけ】

時間の使い方は命の使い方である

 「私も最初からこうではなかったんですよ」渡辺さんが全国友の会と出会ったのは35年前。息子さんが小学校に行くと時間がたくさんあり趣味のパッチワークに没頭していた頃、ご近所の方から誘われて少人数の勉強会に参加。ある日「時間調べ」という自分の24時間の使い道を記入していく勉強会があり、自分と周りの参加者の時間の使い方の違いに愕然としたそうです。「時間の使い方は命の使い方である」という創立者の言葉が心にグサッと刺さり勉強会に続けて参加するように。洋裁を教わり息子さんのパジャマを縫った時に、「お母さんが作ってくれた!」と息子さんが大喜びしてくれた事が忘れられないと話してくださいました。「みんなで教えあうので先生はいません。でも教室に通わなくてもすべて友の会の中で学べました。」毎日パンもご自宅で手作り。そばで見ていたお連れ合いが今はパン作り役を担ってくださっているとの事。

 「『一家総動員』という言葉があり、主婦だけでなく家族みんなに役割があると学びました。息子にも玄関掃きや靴下の下洗いなど自分にできることをお願いしました。夫も活動に理解を示してくれて、パソコンでの資料作成など手伝ってくれているので感謝しています」。

 ただ、家庭内の事で完了せずその中の微々たることでも社会に発信できるものがあればいいと思っていると「友の会マインド」をにこやかに語ってくださいました。

【市民のチカラまつりでやること】

大切な子ども達のためにオンライン料理教室をします

 今年の市民のチカラまつりでは「オンライン子ども料理教室『作ってみよう!簡単おやつ』」を行います。餃子の皮を使ったミニミニピザ・豆腐入り白玉だんごを作ります。全国友の会では子どもの事は本当に大切に考え、市民のチカラまつりでは例年子ども向けの催しを行っているそうです。昨年はママ実行委員のメンバーと一緒にピザ作りをし、大好評でした。また数年前から昨年まではスタンプラリーでブースに来た子どもたちに毎年テーマを決めて「シール貼り」に挑戦してもらっているとのこと。例えば「環境に良いことしていますか?」「テレビ以外にどんな電子機器を使っていますか」等あてはまる場所に自分でシールを貼ります。昨年は300人のお子さんがシールを貼ってくださったそうです。

 昨年は子育て世代の方と一緒に動く事で本当にいろいろ勉強させていただいた、と渡辺さん。「自分たちが今までやってきたことを、若い世代にお伝えしたりできる事があれば嬉しいと思っていますが、ともに活動する事でこちらも本当に学ばせていただける」とお話しされています。今年はオンライン講座ですが、事前準備など今年もママたちに助けていただいてやっています、とのこと。「世代が違う者が集まってやるのが市民活動だと思います」と、今年もママ世代のメンバーとのコラボを心から楽しみにされています。大切な子ども達の為にー―思いのこもったオンライン料理教室、ご期待ください。

 

食の会あびこ

食の会あびこの牛尾代表(右)と杉本さん
大盛況のおせち講習会

【活動の内容】

配食サービスから「食の楽しさ」提案へ

 平成10年 市民会館の厨房を利用し、高齢者向けの配食サービスから始まった「食の会あびこ」はNPO法人を取得し我孫子市の委託を受け、高齢者等のお宅へ毎日夕食50~70食を調理・お届けしていたそうです。市民会館の撤退に伴い配食サービスは終了し、その後の活動を模索する中で高齢者・子ども向け等テーマを決めたレシピ-調理の研究(素材の活かし方や食べやすさ等)や年に1、2回、市民向け料理講座(昨秋のおせち講座は大人気)、他団体とのコラボ企画(あびこ農力発見プロジェクトと共同での会津の郷土料理こづゆ作り等)を開催しています。また、パン工房男塾さんの取り組みを応援し、毎年12月の例会ではパンでクリスマスブーツを作り高齢者施設等へプレゼントするなど、アイディアと愛情にあふれた活動をされています。メンバーの年代も幅広く、市外からの参加者もいます。

こんなにたくさん、しかもおいしいポリ袋料理

【市民のチカラまつりですること】

まずはやってみよう!という思いでオンライン動画配信に挑戦

 今年の市民のチカラまつりでは「ポリ袋クッキング」のオンライン講座に挑戦します。

 昨年、一昨年は「コミュニケーションカフェ」として手作りのクッキーとまなびぃあびこさんのコーヒーとのコラボ企画でした。今年のコロナ渦、当初は調理室の扉を全開にして複数の調理実演コーナーを作り、ポリ袋クッキングを自由に覗いて試食してもらう企画を考えていたそうですが、オンラインでの動画配信を勧められ「うまくできるか分らないがまずはやってみよう」とチャレンジすることにしました。料理をした事がない人や苦手意識のある人にも「まずはやってみよう」と思わせる手軽さ、一度に数品の調理が簡単にでき、高齢者の皆さんはもとより、子育て中や忙しい日・災害時にも役に立ち、しかもおいしい!メインからデザートまで「こんなものも作れるの!?」というサプライズメニューもご用意されているそうです。

ポリ袋クッキング練習会の様子

【活動にかける思い】

食べること・料理することは楽しい

 取材中、牛尾代表から何度も「『食べること・作ることはこんなに楽しい!』と知ってもらいたい」とのフレーズが聞かれました。配食サービスの終了後、メンバーの皆さんの中に「思うように料理ができない・食べられない方の為に何かできないだろうか」という熱い思いがあり、そこに「パン工房男塾」のメンバーでもある牛尾さんが唯一の男性会員として入会しました。

 「牛尾さんが加入されてから皆刺激を受けています」と杉本さん。もともとは一つの料理をじっくり作る会だったのがポリ袋クッキングを始めて、視点を変えた調理ができることでレシピや調理法研究への熱もさらに高まったそうです。

 「料理をしたことがない・苦手意識がある人でも今回の講座を視聴して『やってみようかな』と思っていただければ」、また一緒に作ってみた方には「これを出発点に『これもできるのではないか』といろいろ作って食べてみてもらえたら嬉しい」と牛尾代表、杉本さんは口をそろえます。

 食・料理と人への愛情があふれた皆さんのオンライン講座。ご期待ください!

 

ナチュラルモダンバレエスタジオ

ナチュラルモダンバレエスタジオ 伊藤さん

[活動内容]

ナチュラルに分かち合う モダンバレエの楽しさ

 我孫子駅に程近い「ナチュラルモダンバレエスタジオ」では、市内出身・在住、伊藤千恵さんの指導の下、多くの子どもたちがレッスンに励んでいます。現在「ひよこ(未就学児)」、「白鳥(小学生)」、「ツル(中学生)」の3クラス構成です。

 スタジオに冠した「ナチュラル」は、伊藤さんの優しい存在感そのもの。子どもたちそれぞれの個性を認め、活かす指導が人気です。「技術が身に付けばなお光る。でもそこにこだわりません」。子どもたちに向ける伊藤さんの眼差しはあたたかです。自由に表現する喜び、次にどう動くのかわからない面白さ―モダンバレエの楽しさを、指導者と生徒で分かち合っています。

 発表の場に立つことも、活動の柱となっています。毎年春にスタジオで開催する「ミニ発表会」のほか、2017年からは「あびこカッパまつり」、2019年からは「市民のチカラまつり」に参加。家族に応援され、人前でレッスンの成果を披露することで、子どもたちはまた一歩成長していきます。

 「一人でも多くの子がモダンバレエを続けてくれたら」という伊藤さん、やがては指導者となるような人材が育つことも、願いの一つです。また経験者の方から要望を受けて、年齢上限なしの新クラスを計画中。自身も県外の教室へ通い、モダンバレエの先駆け「ダンカンダンス」を習うなど、常に学ぶ姿勢を忘れません。モダンバレエに描く夢は膨らむばかりです。

レッスン風景

[活動のきっかけ]

我孫子で踊り、広げ、つながる―さらなる展開へ 

 「言いたいことがあっても言葉が出ないタイプでした」。伊藤さんは子ども時代を振り返り、だからこそ踊って身体表現できる嬉しさは格別だったといいます。3歳からクラッシック・モダン、両方を指導する先生に師事。成長するにつれ、曲の選出から振り付けの創作まで、思いのまま表現できるモダンバレエに強く惹かれるように。モダンダンスの歴史に触れた大学時代、改めて「踊り続けたい」という思いに目覚めたそうです。

 振付・指導助手を経て、結婚・出産で1年半のブランク後、2012年に当時暮らしていた流山のカルチャースクールで講師に復帰。育児に奮闘する日々の合間を縫い、踊れることの幸せをかみしめました。夫の克剛(よしたけ)さんは、伊藤さんの意志に耳を傾け協力するスタンス。個々の思いを尊重する心がけは、伊藤さんの指導に通ずるものがあります。

 次第に「生まれ育った我孫子でバレエを広めたい」と考えるようになり、2016年、空手指導者の克剛さんと共有する教室を開設。その際、「我孫子市創業支援補助金」を利用した縁で市や青年会議所とつながりができ、開校後は生徒の保護者にも人脈が広がりました。さまざまな出会いが「市民のチカラまつり」をはじめ、地域のイベントに参加するきっかけをもたらし、活動の幅を広げています。

[市民のチカラまつりですること]

踊り手が楽しんで魅せるステージに

 今回で2度目の参加となる「市民のチカラまつり」では、4作品を披露する予定です。「踊ることを楽しんで、その姿を見てもらおう」。伊藤さんの呼びかけに子どもたちも張り切っています。

 「ひよこ」クラスの4名が踊る「かもめの水兵さん」は、恩師・石川須妹子(いしかわすずこ)先生が振り付けた思い入れのある作品を、伊藤さんが新たに創作。かわいらしい発表となりそうです。「白鳥」クラスの4名による「雪祭り」は、休みなく踊りが展開する、エネルギッシュで楽しい演目となっています。5年生のソロ「チ・カ・ラ」は「つかみどころのない多色使いの踊り」によって、ふつふつと沸き上がる内面の力を表現。ストーリー仕立ての「私のあるく道」は、逆境に立ち向かい自己の道を見出す過程を、中学生がソロで踊り上げます。ソロ作品にはいずれも、コロナ禍を生き抜くすべての人にエールを送る気持ちが込められています。

熱意あふれる子どもたちと、全力で指導する伊藤さん。共につくり上げる作品は会場をおおいに沸かせてくれることでしょう。ぜひご注目を……!

 

総合型地域スポーツクラブ

総合型地域スポーツクラブ 伴さん

[活動内容]

15年目を迎えた総合型地域スポーツクラブ

 活動について、市民のチカラまつりの実行委員でもいらっしゃる、四小元気会の伴さんにお話を伺いました。

 総合型地域スポーツクラブは、文部科学省のスポーツ振興施策の一つとしてできた全国的な組織で、我孫子市にも約1年の準備期間を経て2005年に導入されました。                                                        

 市内6つの中学校の校区に一つずつ活動拠点が設けられ、今では、6つのクラブで約420人の市民の方が参加しています。                                          

 そこでは、興味・関心・競技レベルにあわせて様々なスポーツにふれることができます。

 例えば、スポンジボールを使ったショートテニス、公園などで楽しめるグランドゴルフ、600グラムの鉄の玉を投げ得点を競い合うペタンク、健康体操など6つのクラブで様々な種目があり、ほかにもバス旅行やクラブによっては 趣味のサークル活動も楽しめます。親しみやすい種目と活動がこの団体の特徴なのです。

市民のチカラまつりでのグラウンドゴルフ

[思い]

ご近所の皆さんとの健康づくり、体力・経験を問わずお気軽に……

 クラブでは毎月の予定表があり、あらかじめ予約をしなくても参加できます。急な用事や体調不良でお休みしても大丈夫です。

 「自分が楽しめなければ、人にもすすめられない。笑顔でお迎えしています。」と話す伴さん。その入りやすい雰囲気に、友だちが友だちを呼んでいるとのことです。

 「来てくれた方には、楽しく体を動かしてほしい!」と、外部講師を依頼したり、種目によっては初心者クラスとベテランクラスに分けて、参加できるようしたりしています。

 ケガをしないように、背伸びせずに楽しめます。まさに「スポーツの苦手な方、大歓迎!」なのです。

「自分らしいスポーツの楽しみ方を見つけて頂き、その活動を通じて新たな仲間づくりと、健康づくりをして頂きたいと思っています」と伴さんは語ります。

市民のチカラまつりでのオーバルボール

[市民のチカラまつりですること]

YouTube映像で活動を紹介

 市民のチカラまつりでは5年前より、太極拳の演武や、グランドゴルフや卓球バレー の体験活動で参加してまいりました。その間、お子さんをはじめ市民の皆さんに楽しんで頂きました。

 今年は、対面ではなく映像で諸活動を紹介します。展示コーナーでは掲示物やパンフレットも用意しています。「新型コロナ感染症や熱中症の対応で、思うように会員さんに会えませんが、あなたは一人ではないよと伝えること、励ますよう心掛けています」と伴さんから熱いメッセージをいただきました。

 

NPO法人住み良いまちづくり研究所

住み良いまちづくり研究所 米澤さん

[活動内容]

竹林整備に尽力し、竹灯籠イベントを創出

 NPO法人「住み良いまちづくり研究所」は2004年に発足以来、「まち」への気概に満ちた取り組みで注目されてきました。代表・米澤外喜夫さんをはじめとするメンバーは、市内で増え続ける竹林を整備し、間伐材で竹灯籠(たけとうろう)などの工芸品をつくっています。

 竹灯籠は、同研究所の主催行事で大活躍。東日本大震災後、毎年実施している「3.11鎮魂竹宵」では、大小、色とりどりの灯りが夕闇に映え、震災復興を支えた人々の絆を呼び覚ますかのようです。あびこショッピングプラザガーデンコートを会場とするこのイベントは、今やすっかり地元に根付き、防災啓発にも一役かっています。

 300もの竹灯籠が壮観をなす「新春竹宵」は年末年始の恒例行事です。2015年から、35年間放置されていた竹林の整備をし終えた滝前不動(岡発戸1271)で開催。同敷地ではこのほか、タケノコ掘りなどのイベントも行い、境内はかつての賑わいを取り戻しています。「滝前不動は鎌倉街道上にあり、『新四国相馬霊場』札所の一つ。再発見すべきスポットです」と米澤さん。境内の桜をよみがえらせ、花見の名所を復活させる構想もあります。

 米澤さんたちは竹灯籠のほかに、花器、オブジェ、おもちゃなども制作。完成度、芸術性の高い作品を生み出しています。さらに廃材を利用して竹炭づくりにも挑戦。第1土曜日に香取神社で開かれる朝市で制作物を販売するなど、その活動は多岐に渡っています。

メッセージ性の高い3.11鎮魂の作品
雰囲気ある新春竹宵の様子

[活動のきっかけ]

活動の原点は男の居場所づくり

 プラスチック製品が普及して久しい現在、農具・日用品の材料だった竹はもはや必需品ではなくなり、竹林は各地で放置されるばかりです。増えるだけでなく、通常5、6年で枯れる竹はその残骸で瞬く間に地上を覆い、ほかの植物を駆逐。すると虫も鳥も住めない「死の竹林」となります。間引いて一定の間隔を空けた竹林には光が入り、生態系が復活するのです。米澤さんたちの地道な活動は、地域に多大な恩恵をもたらしています。

 スケールの大きな事業を成し遂げながら、同研究所が最も目指すところは「男の居場所づくり」です。「子育てを通して地域交流できる女性に対し、男性は仕事一本で過ごす方がほとんどでしょう」という米澤さん自身も、サラリーマンを経て30歳で起業、仕事に邁進した「会社人間」でした。第一線を退いてから「社会にお返ししたい」とボランティア活動を開始。そんな折、仕事での人間関係しか築かないまま定年を迎え地域で孤立する男性の存在を知り、居場所の必要性を実感しました。

 米澤さんの思いは、同研究所の活動拠点「住み良い工房」(久寺家751-5)へとつながっています。緑に囲まれた好立地に、制作に必要なジグソー、万力、電動のこぎりなどの工具や機材を揃え、それだけでなく、よりどころとなるような居心地の良さが魅力です。活動が大きく実を結んできたことは、楽しく集い、のびのびと作業できる場の成せる業かもしれません。

秋元佐予さんのポスター原画を竹灯籠にする

上記は、9月18日~27日に、我孫子駅南口ロータリーにて掲示中。

[市民のチカラまつりですること]

竹灯籠教室で広げる仲間の輪 

 現在、同研究所のメンバーは約50人。可能な範囲で自分のできること、やりたいことをする、というスタイルで参加可能です。中には毎日のように工房で作業するメンバー、散歩がてら顔を出すメンバーなどさまざまです。米澤さんは「好きなことを通して集まれる仲間がいる、これほど楽しいことがあるでしょうか」と、世代を問わず新しい仲間の入会を歓迎しています。定期的に竹灯籠づくりや竹細工の教室を開催し、活動のPRにも積極的です。

 2017年から参加している「市民のチカラまつり」でも、子どもから大人までを対象に竹灯籠づくりの教室を開催してきました。今年も同教室を開催予定。メンバーが丁寧に指導するので、初心者も無理なく参加できると好評です。安全面に配慮し、竹灯籠の灯りにはLED電球を使用しています。でき上がった作品はもちろん持ち帰り可能。ぜひ、あなたのオリジナルデザインで世界に一つだけの竹灯籠をつくってみませんか?

  

筑波大学発おもしろふしぎ理科実験

筑波大学 小林先生

[活動内容]

「理科が苦手な子、大歓迎!」のおもしろふしぎ実験20連発

 「筑波大学発-おもしろふしぎ理科実験・工作隊」を主宰する、筑波大学・応用理工学類の小林正美先生。筑波大学に赴任した際に、つくば市教育委員会のつくば科学出前レクチャーに登録したのが始まりだとか。活動の内容と目的は、小・中・高校生を対象とする理科の実験・ 工作の演示・指導を行い、児童・生徒の理科に対する能力を開拓することです。さらに生涯学習の観点から、一般の方を対象としたテーマも扱っています。

 依頼で最も多いのは、小学校での出前実験工作(保護者参加可)です。小林先生の講座内容はお任せなのも人気の理由。身近なものを使って不思議で面白い実験をなんと約20個も行います。

 講座の冒頭、先生の肩書を紹介されると、特に保護者は緊張の面持ちになりますが、30分もすると子どもたちは引き込まれ、次第にリラックスして先生の周りに群がり始めます。先生の実験グッズに皆、触りたくて仕方ないのですね。「不可侵条約によって私の周りには入れませんって言っているんですけどね」と笑う小林先生。「昔のお祭りの屋台や駄菓子屋のような状態です。これ、俺も私もやりたいというワクワクした気持ちを子どもたちに植え付けたい。というよりも、私が好きなんです。昔も今も子どもたちは変わらない。駄菓子屋や屋台で自由に遊べるような機会がないだけ」と言います。

理科実験の模様1

[思い]

理科好きな子よりも、遊びまわっている子を理科好きにしたい

 小林先生ご自身はどんな幼少期を過ごしたのでしょうか。「親父がそこらに置いてある工具を勝手にいじくりまわし(そして手は血だらけに)、市と小学校の図書館の実験・工作の本を借りてきては自宅で色々ガラクタを作っていた」そうです。ないものは自分で作ろうと、ブリキの缶を切ってしょっちゅう手を切っていたとか。生まれ育った小諸市には本屋と駄菓子屋がたくさんあったことも、小林少年にとっては幸せな環境だったようです。

 「家は裕福ではありませんでしたが、本とプラモデルは結構買ってくれました。家中アンテナ線を張り巡らせて、近所の電気屋さんからもらった壊れたラジオから取り出した部品でラジオを作ってはその性能をチェックしたり。台所も実験室で、塩を全部使ってしまい母にしかられることも度々。原理も知らずに色々なことを試しました。大学の講義で初めて原理を知ったことも度々。小学生のときにバッテリー、鉛筆の芯と食塩水で作った代物が、燃料電池だと知ったときは驚きました。「燃料電池って、原理を知らない小学生でも作れるんだ!」と。私の経験からすると、原理など知らないほうが発想が豊かになる気と思います。なので、私の実験・工作では答えは言わず、原理など知りたい人は(ネットではなく)図書館に行きなさいと伝えます。原理を教えると分かった気になってしまい、発想の芽を摘んでしまうので」。

 実験には駄菓子屋や100円ショップで売っているおもちゃが登場します。また、スキムミルクやマシュマロを使った食の実験は、特に女の子が興味を示すようです。「女の子は学年が上がるにつれて理科は苦手に、反比例して料理が好きになる子が多いようです。私の講座には理科が好きじゃない子に来てほしい。今、理科を好きだと言っている子よりも、遊びまわっている子を理科好きにしたい」。実験に参加して自信をつけて、人生が変わった子もいるそうです。

 先生の持論は「文系にも理科が必要」。そもそも文系・理系という分け方が大嫌いで、「私の実験は文系の人に来てほしい。小学3年生までのお子さんは保護者の方にもぜひ見ていただきたいです。お子さんが理解できなかったことを話してみてください。お父さん、お母さん、スッゲー!ってなりますよ」。過去にお子さんと参加したお母さんが、「高校でこの授業を受けていたら、理系に進んだかも」と感想をもらしていたそうです。

理科実験の模様2

[市民のチカラまつりでやること]

テーマをひとつに絞らないので、はまったら、放っておいてください

 当日は、小学生を対象にZoomで理科の実験・工作をおこないます。小林先生からのメッセージです。

 「市民のチカラまつりでは、その辺にある変なものでビックリするものをやります。なにか一つでも興味を持ったら自分で調べてください。20個くらい実験・工作をやる予定ですが、途中で子どもさんがあるものにはまったときは、その子はそれに目覚めてしまったので、放っておいてください。なぜ20個もやるかと言うと、テーマをひとつにしてしまうと、面白くないと思った子にはツライからです。90分を地獄にしたくない。今回はZoomですので、工作を減らして実験をいっぱい見せる予定です。ぜひ、理科が苦手な子、一緒に楽しみましょう!」

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