手賀沼を臨む景観を求めて人々が集う水の館。一階にある「旬菜厨房 米舞亭」が、2020年4月7日にリニューアルオープンした。店内は、グリーン、オレンジの2 色を基調に一新し、気軽に利用できる雰囲気。天気の良い日はテラス席も人気がある。新メニューは、地元野菜をトッピングした米舞カレーや海鮮フライ定食、油淋鶏定食のほか、野菜たっぷりのかき揚げそばやうどんなど、バラエティに富んでいる。いずれのメニューにも「農産物直売所あびこんの併設店であるメリットを生かしながら、我孫子産の旬の野菜をお客さまにふんだんに召し上がっていただきたい」という(株)あびベジの大炊三枝子代表取締役の心意気が込められている。大炊代表は、野菜の特徴や生かし方を熟知する元農業者でもある。厨房は農家の台所さながらに、新鮮な野菜で溢れている。
調理スタッフは、主婦歴の長い女性たち。そして、いつも前向きな大炊代表と、チームワークは抜群だ。
アンケートやホールスタッフが伝えるお客さまの声を基に、試行錯誤を重ねながら、よりおいしく、見栄え良く、そして早く提供するために努力する同店。お客さまからの「おいしかったよ」が励みだ。水辺を訪れる人が増えるこれからの時期。我孫子の野菜を食べるならここ!と言われる店を目指し、日々の挑戦は続く。
JR我孫子駅南口に今年1月、スペシャルティコーヒーのコーヒースタンド「WITH the COFFEE」(ウィズ ザ コーヒー)がオープンした(後にWITH TRIANGLE COFFEEに改名)。我孫子出身の店主、青木裕司さんが厳選したオリジナルブレンドや、カフェラテに合わせたエスプレッソブレンドなどを一杯ずつ、挽きたて・淹れたてで提供している。
青木さんは、約10年前から東京・有楽町の国際フォーラムや公園などに「Caffe del CIELO」の名でコーヒーのキッチンカーを走らせてきた。コロナを機に出店の機会が減少したが、テークアウトの需要ならあると、コーヒースタンドの開店を決めた。
目指したのは、「日常に溶け込みながらも、非日常の特別感を感じる店」。ガラス張りの風通しの良い店舗デザインや素材もすべて自分で決めた。店名には、趣味、子育て、仕事といった日常に、コーヒーという彩りを添えてほしい、という願いを込めた。「子どもがベビーカーで寝た隙に、ママやパパがさっと来られる店が、意外とない。そういう使い方をしてもらった時は嬉しい」と3児のパパである青木さんは微笑む。
4月以降の週末や繁忙期は、ふなばしアンデルセン公園にキッチンカーを出店するため、技術、接客共に信頼のおけるスタッフに店を任せる。コーヒーの仕事に興味を持つ若い人たちに、自身の経験を伝えたいとも考えている。
ちなみに私は紅茶党なので、ラテやチャイなどを注文するが、好みを覚えていて、「ラテのコーヒーの量は少なめにしますね」とさりげなく調整してくれる。皆さんも好みを伝えて、おいしいカフェライフを楽しんでくださいね。
ランチは好きなものを食べるのが私のモットーだ。最近のお気に入りは、我孫子駅南口にあるレストラン「コ・ビアンⅠ」のきのこのパイ包みスープ(605 円)。きのこがたっぷり入った温かいスープは、暑い季節も冷房で冷えた胃を温めてくれるだろう。
コ・ビアンⅠは1969 年に創業し、2003 年に近くにコ・ビアンⅡがオープン。2004 年にはコ・ビアンⅠがリニューアルし、現在の瀟洒な建物になった。ステンドグラスや天使のオブジェが舞う店内装飾は高級感がある。
「店は客のためにあり、店員とともに栄える」という理念を掲げた創業者の小熊覚三郎さんの志を約4 年前に受け継いだのが、店長を務める孫の小熊啓太さんだ。調味料と米を特に大切にするのは創業からのこだわりで、沖縄産の塩、茨城産の米を使用。ほぼ手作りのメニューは毎日食べても飽きず、チェーン店の味とは一線を画す。メニューも多彩で選ぶ楽しみもある。我孫子のファミリーレストランの代表格だ。
毎日昼夜来店する超常連客をはじめ、リピーターが多いことから、啓太さんの発案で期間限定メニューを作り、人気が高いものをグランドメニューに移行して、新たなファンも惹きつけている。
「100周年を目指して、ずっとお店に関わっていきたい」と語る30歳の小熊店長の目の輝きは本物だ。書いているうちに、次は何を食べようかとがお腹が鳴った。
2019 年9 月7日、手賀沼公園、アビスタの向かいにオープンした「coto(コト)」。我孫子では珍しいヴィーガン料理を提供する店だ。ヴィーガンとは、植物性食材のみを使用し、肉・魚・卵・乳製品やハチミ
ツも使用しない調理法を指す。動物性食材を使わないと物足りないのでは……という心配はご無用。メニューの一例として私が食べたベジカキフライは、舞茸や豆腐などを使い、油で揚げるためボリューム満点。土鍋で炊く玄米はモチモチとして噛みしめるほどに味が出る。
店主は、様々な食事法を体験する中でヴィーガン料理に出会った。個人の体感として心と体に心地良く、消化が早く、食べた後に身体が重くなりにくいと感じ、一つの食の選択肢としてたくさんの人に知ってもらえるきっかけになればとカフェを開店。店内以外にもテイクアウトが可能で、目の前の手賀沼公園の豊かな自然の中で、coto のランチボックスを食べる楽しみができた。
ヴィーガン=身体に良いから食べるのではなく、おいしいからまた食べたくなる。使用食材や調理法に制限がある分、メニュー作りには時間がかかるが、ヴィーガンに興味がなかったり、初めてヴィーガン料理を食べたりしたお客さまが「おいしかったです!」と笑顔を見せてくれた時に嬉しさを感じるという店主。白砂糖や小麦粉を使わないスイーツも胃に優しく沁みわたる。食事、雰囲気共にcotoの存在に癒される人はこれからも増えていくだろう。
友人が我孫子に遊びに来る際、私は我孫子駅北口側にある南フランス料理とワインの店「ビストロ ヴァン・ダンジュ」に案内する。「おいしい!」と「お腹いっぱい!」を言ってもらえる自信があるからだ。お店は今年4月に開店20周年を迎えた。5人の調理スタッフが独立し、オーナーシェフの小原健さんは、約5年前から店の規模を縮小し、一人で厨房に立つ。15年以上働くベテランのパートさんたちに支えられている。
料理、パン、デザートまですべて手作りのため、店舗休業日も仕込みをし、365日ほとんど店にいるという小原シェフ。コロナ禍もテークアウト需要で忙しいが、最近は月に一日だけ包丁を握らない日を作り、リフレッシュしている。調理スタッフの人件費がかからない分を食材費に充て、値が張っても良質なものを仕入れてお客さまに還元する。「我孫子は舌が肥えている町。もっといいワインある?食材もいいのある?というお客さまの声に育てられました」
30歳で独立した小原シェフも今年で50歳になった。「まじめにやっていれば続けられるんだ、というのが実感です。経験が増えた分やりたいことはいろいろあるけれど、全部はできないので、毎月目標を決めてやることにしています」と語る。現在、我孫子市内にゆったりと食事とお酒を楽しんでもらえる場所を探している。「手賀沼がチラッと見えて、理想は、一日に昼2 組、夜1 組。景色を眺め、飲みながら、半日くらいゆっくりしてもらえるような店にしたいですね」。良い場所が見つかれば、豊かな自然と共にある“我孫子リゾート”の楽しみが、一つ増えそうだ。
我孫子駅南口を出て路地に入ると、ひときわ可愛らしいお店に出合う。老若男女問わず、客足が途絶えないパン屋さん「ブンカ・ドー」だ。5 年前、我孫子に引っ越した際、私は乳幼児を抱えながら新しい土地ではじまる生活に期待と不安が入り混じっていた。その時、頼れるパン屋さんが近くにあったことは、とても心強かったことを覚えている。
現社長は3 代目で、初代が横浜での修業を経て我孫子に開業した。今年で創業71 年を迎える。12 年前に店舗をリニューアルし、現在のお店の雰囲気となった。店内にはあんぱんやメロンパン、根強い人気を誇るコロッケバーガーなどの定番商品をはじめ、ハード系のパンなど数十種類のパンが並ぶ。「ピークは11 時~12 時半頃。常連のお客さまは焼き上がり時間を覚えていて、その時間に来店される方も多いです」と教えてくれたのは3 代目社長の妻・雅子さん(以下コメント同)。「たくさんの種類のパンが並んでいますが、その日の分が終了したら売り切れです。一つからでも電話で予約を受け付けていますのでお気軽にどうぞ」
一番人気だというクリームぱんは、驚くほどふわふわのパンになめらかな自家製カスタードクリームがたっぷり詰まっている。「特別なことはしていません。なるべく添加物を入れず、昔ながらの製法でていねいに作り続けています」
常連客の中には親子3 世代にわたって通っている人も多い。「子どもの頃から通ってくださる方が年賀状を送ってくださったり、我孫子から引っ越すタイミングでお手紙をくださったりする方もいます。そういうお手紙をいただくとやっぱりうれしいですね」。ここでは単なるパン屋さんとお客さんを超えた「つながり」という文化が育まれている。
かつて白樺派の文人や陶芸家たちが居を構え、歴史と文化が息づく街・我孫子。近年では、そんな文化の薫りに魅せられて移住する人も多いと聞く。我孫子のシンボルでもある手賀沼公園から徒歩5分。今回訪れた「ノースレイクカフェ&ブックス」は2014年にオープンし、今年で10年目を迎える。
「図書館はいつもにぎわっていて、この街は本が好きな人が多い印象でした。おいしいコーヒーが飲めて、ゆっくり本を読める場所がもっと増えたらいいなと思ったのがオープンのきっかけです」と教えてくれたのは店主でカフェ責任者の松田昌江さん。本とレコードを担当する夫の拓巳さんとともにお店を経営している。
買い取った古本とレコードを独自の目利きで選び抜き、店頭とウェブで販売している。我孫子にゆかりのある本や詩集、図録、文芸誌など幅広いジャンルの本が置いてあり、商品の入れ替えはこまめに行なっているのだそう。
「今日は女性のお客様が多いですが、普段は男性のお客様も多いんです」と昌江さん。ランチメニューは2 ~ 4種類用意し、取材日は、チキンときのこのドリア、ひよこ豆の焼きカレー、チリコンカン、ナムルライスを提供していた。どのメニューも、根強いファンがついているのだとか。
「オープン当初は店内で読書会やワークショップなども行なっていました。今は来てくださったお客様に気持ちよく過ごしてもらえるよう、本をきちんと売り、よりおいしいコーヒーを淹れられるようにと、本来の仕事に集中していきたい」と語る。コーヒーの香りと居心地のよさに時間を忘れそうになるブックカフェ。手賀沼散歩の寄り道に立ち寄ってみては。
手賀沼ふれあいライン沿いに2023年6月8日にオープンした「ユール・エ・スワン」。フランス紅茶専門店に勤めていた夫の健司さんと、フラワー&アパレルショップに勤務していた妻の聖子さん夫妻が営む「花と紅茶の専門店」だ。健司さんは我孫子出身。「我孫子は文学の街。こだわりを持って生活を楽しんでいる方もいますね」と語る。白樺文学に想いを馳せて製作したオリジナルブレンド「Ealgrey SHIRAKABA」もギフトとして愛用されている。
パリの街角を思わせる外観から一歩入ると、伸びやかな花々に迎えられる。棚には紅茶を中心とした様々な国からの厳選した茶葉が並び、ガラスの小瓶の蓋を開けて香りを嗅いだり、茶葉の色合いを見たりすることができる。棚の上部にはコンフィチュール(フランス語でジャムの意)が数種類あり、自家製の焼き菓子が置かれている。
紅茶と焼き菓子を担当する健司さんが大事にしているのは、素材の味わい。「茶葉は農産物なので、産地やシーズンごとに味わいが変わるため、たくさんの茶葉を飲み比べて選びます。ハーブなどをブレンドする場合も、茶葉本来の味を生かしています。コンフィチュールのフルーツも、その時期の旬素材を使っているので、出合いを楽しんでください」と語る。焼き菓子は紅茶を引き立てる味を大切にしている。
果肉感たっぷりのコンフィチュールと厳選素材で作られたスコーンの相性は抜群。紅茶とのセットも販売しており、ブーケと一緒に贈ることもできる。「日常の暮らしのエッセンスとして、お花と紅茶を身近に感じ、取り入れていただけるような店を目指しています。ぜひお気軽にお立ち寄りください」と聖子さん。人へのギフトだけなく、自分にも花一輪、紅茶一杯を贈りたい。
引っ越してきた当時、どの店に入っても“おや?見ない顔だね”という無言の雰囲気を感じて、ちょっとへこんでいた。そんなある日、いつものように自転車で走っていたら、「焼立てパン」の文字が見えた。私のおいしいものレーダーがピピピと反応し、ハンドルを切ると、湖北の保健センター近くの裏道にたたずむ「ブーランジェリーB&P」を発見。チリンと鐘を鳴らしてドアを開けると、ほっそりとした女性が迎えてくれた。奥では職人らしき男性が仕事に熱中している。並ぶパンを見て驚いた。どれもオシャレで、個性が際立っている。本能のおもむくままに選び、山盛りのトレーを女性に渡す。二言、三言言葉を交わし、つかず離れずの心地良い接客を受けて、すっかりファンになってしまった。
一年半経った今では、季節によって具材が変わるパンを選びながら、ご夫婦と会話することが、私の暮らしの中での大きな楽しみになっている。おいしいものを作る人には、譲れないこだわりと人間的な魅力がある。最近、全商品が国産小麦粉使用になり、モチモチさに磨きがかかった。
ただ困ったことに、パンがおいしすぎるためエンゲル係数ならぬパンゲル係数※と、私の体重は増加の一途をたどっている……。食べる楽しみは止められないから、娘と縄跳びでもしよっと。※パンゲル係数:食費のうちパンが占める割合(ライターの造語)
(2019年6月号掲載)
~あれから5年~
ある日気づいたらお腹にパンのような脂肪を発見して、お店に行くのをしばらく控えていた時期もあった。しかし今は小腹がすいた時や休日のランチなど、ちょこちょこ買いに行っている。小学生になった娘もすっかり天然酵母パンに魅せられ、「チョココロネはB&Pのが一番だね!」と言っていて、私もそう思う。ご夫婦との会話も楽しみで、私にとっては、宿り木のようなお店だ。
湖北の田園風景を眺めながら手賀沼ふれあいラインを走ると、白い外観の瀟洒な一軒家「Gallery Cafe紅屋」が見えてくる。最初は“子連れで入れるかな……”と躊躇したものの、画家のマダム、金井千絵さんの醸し出す穏やかな雰囲気と子どもへの優しいまなざしに安心しきって通っている。さらに店内に飾られた絵画や卓上のステンドグラスのランプ、センスが光る食器なども心を豊かにしてくれる。幼稚園児の娘も「このお店が出来て良かったよね!」と嬉しそうに過ごしている。
少し前のことだが、食事中に娘があるきっかけで激しくぐずりだした。こういう時、親としてはなす術がなく、途方に暮れる。他のお客さんの目も気になり、冷静になろうと外に連れ出して戻ると金井さんが「どうしました?」と声をかけてくれた。「食べ物を落としてしまったのがショックだったみたいで」と答えると「食べ物を大事にして偉いね」と言われて、今度は私が泣きそうになった。以来、私はさらにお店のファンになった。そして子は親の心理を良く見抜いている。「おいしいものが食べたいなあ」と私が言うと「じゃあ、あの白いお家のカレー屋さんに行こう!」と誘うんだもの。
(2020年2月号掲載)
~あれから4年~
オープンから2回のリニューアルを経て、メニューは大きく変更し、アサリ飯セットが加わった。建物の2階から顔を覗かせる愛犬「ムータン」を見るとホッとする。最近娘と一緒に行っていないが、もうあの頃のようにぐずって泣くこともないだろう。田園風景を眺めながら温かい雰囲気で食べる手作りメニュー。湖北に新たに転居してくる人にもおすすめしたいスポットだ。
ショッピングが大好きな私と娘のお気に入りの店。それは、湖北駅北口にある「カフェと雑貨のウイング」だ。2階建ての一軒家は、カフェスペース、手作り品の販売スペース、手芸用品販売スペースが同居し、いつも楽しさにあふれている。
店内には季節を感じられる工夫が随所にある。去年の12月、カフェで飲食をすると運ばれてきたプレートに、折り紙で作ったツリーやサンタクロースがさりげなく置かれていた。持ち帰り、今も大切に保管してあるが、なんとツリーはスタッフ総出で200個も折ったそうだ。また、おいしい手作りケーキとドリンクのセットが650円のため、「お茶しちゃおっか!」と気軽に利用できるのも嬉しい。食後は定期的に変わる販売スペースの手作り品を見て物欲と戦う。さらに2階にある個室では手芸などの各種教室が開講され、見本作品を見ていると不器用な私でさえ、何か挑戦してみたいなと思う。個室もリーズナブルな価格でレンタルできる。
「120人の作家さんの作品に日々囲まれて楽しく仕事しています」と藤咲和美店長が話す通り、行けば必ず素敵な作品や食事、そして人に巡り合える。娘を幼稚園バスに乗せた後、一人でのんびり過ごすこともあるが、スタッフの皆さんの温かく、ゆったりとした接客に思わず時間を忘れてしまう。カフェ、作品販売、手芸用品販売、教室と一店で4度楽しめる同店は地域で愛され、2020年5月で4周年目を迎える。ほぼ毎月月末の金曜、土曜日に店内で「手づくりまるしぇ」が開催される。ぜひ行って、一期一会の宝物を探してみてはいかが?
(2020年3月号掲載)
~あれから4年~
丁寧に作られたメニューをゆっくり味わい、家族へのお土産に手作りスイーツを買い、レジでは温かいスタッフさんとの会話に心が温まる。カフェウイングは、地域にとって欠かせない居場所だ。
夜になると、居酒屋の明かりがポツポツと灯る湖北駅南口に、2022年6月5日、「餃子の伍九」がオープンした。店主の鈴木さんは会社員時代に出張の機会が多く、おいしいものに出合うと妻を連れて行った。「飲食店は自分で定年が決められる仕事」と会社を定年退職した後の開業を夢見ていたが、友人が病で倒れたのをきっかけに、「やりたいことはすぐにやろう」と予定を前倒しにした。夫婦で営業できる広さの物件を探し、湖北に決めた。
看板メニューの焼き餃子は小ぶりだがパンチの効いた味で、鈴木さんの母の秘伝で隠し味に味噌が入っている。試行錯誤の末、餃子の旨みが染み出した「水餃子とんこつラーメン」が完成。海鮮だしの「スープ餃子」など餃子のバリエーションを増やし今一番の推しは、開店一周年を記念して、発売した「M.ジャンボ餃子」。Mはメガを意味し、サイズは通常の5倍。直径15cmの皮も通常よりもモチモチ感を強調した。当初からのメニューでサクサクの唐揚げや上品な春巻きもあり、定食、組み合わせ、単品と、自在に選べる。定食のモチモチとした三分づき米、自家製味噌漬けや日替わりの汁物もメインディッシュを引き立てる。吟味した調味料や素材、そして水が飽きの来ない味を創り上げる。
メニューアイデアと接客は鈴木さん、調理は妻と役割分担をしながら、店の雰囲気はとても温かい。「素人が始めたので大変ですが、お客さまの喜ぶ顔を見るのが嬉しいです」と二人。「お子さま連れの方にも心地良く過ごしてほしい」との心遣いも随所に感じられ、娘はすっかり伍九ファン。親子で赤提灯に引き寄せられてしまう今日この頃だ。
(2023年1月号掲載)
JR成田線湖北駅南口には、我孫子市保健センターがある。健診の帰りなどにゆっくり過ごせるカフェが駅前にあったらいいなあと考えていたら、2022年3月14日に、一軒家の「Cafeオリーブ」がオープンした。運営は、特定非営利活動法人自立支援ネット我孫子で、生きづらさを抱える人の就労を継続的に支援する施設でもある。以前は、少し離れた場所で「イエローハート」として宅配弁当の事業を行っていた。お客さまから「お弁当を食べられる場所があったらいい」と言われたことをきっかけに、駅前への出店を決めた。
店内は明るい雰囲気で入りやすく、日替わり弁当が500円~ということもあり、つい足が向いてしまう。メニューは手作りで、栄養士が献立を考える。調理担当者は朝6時半から調理を開始し、市内各所に弁当を1個から届ける。
理事長の影山真理子さんが大切にしているのは、働いている方と対話すること。初めは表情が乏しかった人が、話すうちに、働くうちに表情豊かになるケースを幾度となく見てきた。「おしゃれなカフェで働くことでモチベーションが上がっている方が多いようです。みんなが生き生きと働く姿を見て、エネルギーは創れるものなのだと感じました」と影山さん。
最近は向かいにできたラーメン店利用の後にコーヒーブレイクを楽しむビジネスマンなど、新たな客層も増えてきた。影山さんは「今後はいろいろなイベントに出て、皆さんに障がい者就労への理解を深めてほしい」と話す。湖北駅南口エリアがどんな風に盛り上がっていくのか、利用しながら見守りたい。
(2023年6月号掲載)
湖北の田園風景を眺めながら手賀沼ふれあいラインを走ると、白い外観の瀟洒な一軒家「Gallery Cafe紅屋」が見えてくる。最初は“子連れで入れるかな……”と躊躇したものの、画家のマダム、金井千絵さんの醸し出す穏やかな雰囲気と子どもへの優しいまなざしに安心しきって通っている。さらに店内に飾られた絵画や卓上のステンドグラスのランプ、センスが光る食器なども心を豊かにしてくれる。幼稚園児の娘も「このお店が出来て良かったよね!」と嬉しそうに過ごしている。
少し前のことだが、食事中に娘があるきっかけで激しくぐずりだした。こういう時、親としてはなす術がなく、途方に暮れる。他のお客さんの目も気になり、冷静になろうと外に連れ出して戻ると金井さんが「どうしました?」と声をかけてくれた。「食べ物を落としてしまったのがショックだったみたいで」と答えると「食べ物を大事にして偉いね」と言われて、今度は私が泣きそうになった。以来、私はさらにお店のファンになった。そして子は親の心理を良く見抜いている。「おいしいものが食べたいなあ」と私が言うと「じゃあ、あの白いお家のカレー屋さんに行こう!」と誘うんだもの。
(2020年2月号掲載)
~あれから4年~
オープンから2回のリニューアルを経て、メニューは大きく変更し、アサリ飯セットが加わった。建物の2階から顔を覗かせる愛犬「ムータン」を見るとホッとする。最近娘と一緒に行っていないが、もうあの頃のようにぐずって泣くこともないだろう。田園風景を眺めながら温かい雰囲気で食べる手作りメニュー。湖北に新たに転居してくる人にもおすすめしたいスポットだ。
今、湖北駅北口が静かに熱いです。アンティーク家具店のSu3caの店舗に別棟ができ、毎週金曜日にsweets nicoとコラボして「Su3ca/m゜co」を開店。キッシュやsweets nicoのデザートが堪能できます。初回に友人と3人で行った際、思わず4種頼んで1種をシェアしてしまいました。2回目の訪問は一人で閉店間際に駆け込み、自家製ドリンクをグイっと飲んで、店主と話して、店を出る頃には気分がリフレッシュ! 6 月から10 月はSu3caで日光天然かき氷も販売。自宅から自転車で行ける距離に、こんなにおしゃれなお店ができて幸せです。
【Su3ca/m゜co】
我孫子市中峠1738
営 業 日:毎週金曜日
営業時間:11:30 ~ 17:30
そしてわが家の御用達、精肉と惣菜の(株)山田屋。「挽き肉ありませんか?」と訊くと「挽きますよ~」なんて会話ができるし、各種総菜もある、家庭の強い味方です。火曜はコロッケが、木曜は肉が1割引きになるのもポイント。こちらの「豚トロ」は一度食べたら忘れられないサクッと嚙み切れる柔らかさ。魚焼きグリルで焼いて、レモンと塩でさっぱりいただくのが好みです。あー、豊かな食のまち、湖北。つい財布の紐がゆるみます。
【(株)山田屋】
我孫子市中里8-2
04-7188-2254
営業時間:9時~ 18時半頃
定 休 日:金・第4土曜日・不定休あり
湖北駅南口にも個人商店が多くあります。昭和レトロな町並みに癒されに、のんびりと成田線でお越しください。(片岡)
2011年3 月に起きた東日本大震災で、我孫子市内でも特に布佐地区は大きな被害を負った。そんな中、2012年にオープンした「カフェレストラン こころ音」の存在に、布佐の人たちがどれだけ心を慰められたか分からない。
店主の松田弘さんは56歳の時、長年の夢だった喫茶店をオープンしたいと考えた。出店場所を探す中で、国道356号線から近く、駐車もしやすい場所として、この土地に決め、友人に建物の建築を依頼した。妻と息子2人と共に、渋谷のカフェスクールに通い、カレー、ミートパスタ、ナポリタン、プルコギ、サンドイッチのメニューから始めて、10年の歳月が流れた。その間、接客とお菓子作りを担当していた次男の弘樹さんを亡くし、三男の大樹さんは近隣に「らーめん元気」を開店し、現在は夫婦二人で居心地の良い店を続けている。
料理はもちろんのこと、ドレッシングからケーキまで手作りする。看板メニューの生麺のパスタは、厨房設備の都合で、乾麺はゆで時間がかかり、お客さまを待たせてしまう、という理由で始めたが、常連客から「都内でいろいろ食べてきたけれど、これで十分よ」と太鼓判を押されたそうだ。ランチセットの大豆や鶏ひき肉入りのしょうがのスープは、松田さんが大好きな作家、宮本輝の小説に出てくるスープを再現した。飲むとホッとして活力が湧く。
「店をやって良かったのは、様々な方と交流ができることかな」と弘さん。「自分の家にいるみたいってゆっくりされる方も多いです」と妻の十三子さん。自然体でいられる雰囲気と、手作りのおいしさがこの店にはある。
(2022年11月号掲載)
週に2日しか営業していないお菓子屋さんが我孫子市布佐にある。店内に並ぶのは焼き菓子がメインだが、毎月第3金曜日に「お菓子の定期便」と名付けて、予約者に普段販売していない生菓子や季節のケーキを2000円で販売している。
店主の森さやかさんは、2 人の子どものお母さんだ。結婚前までパティシエをしていた経験を活かし、子どもが小学校に上がるタイミングで仕事を再開しようと考えた。しかし、ケーキ店の勤務時間は長く、どこかに勤めることは考えなかった。2013年に自宅の敷地内に夫といとこの協力でウッドデッキを作り、お菓子の製造、販売を始めた後、現在の山小屋風の店舗を構えた。独立して8年。「大変なこともあるけれど、自分で時間を組み立てられるのがいいです」と森さんは微笑む。
お菓子作りのテーマは「自然にあるものを自然に使いたい」「昔おいしかった記憶があるものを追いかける」。土いじりがしたくて都内から転居してきた経緯もあり、いちご農家に手伝いに行くこともある。
まだまだ子育てメイン担当の母親にとって、子育てと仕事のバランスは普遍的なテーマだ。家事、育児も大事だけれど、仕事や好きなことで自分を表現することも大切。森さんのように暮らしを基軸に、子どもの成長に合わせて無理なく働くことは、本人と家族にとって幸せな選択だと感じる。森さんの地に足のついた生き方は、お菓子作りにも当然表れていて、口に入れるとホッとする味。だからまた食べたくなる。
(2021年3月号掲載)
我が家の台所にはおやつのへそくり、略して「おやくり」を隠す場所がある。家事を頑張ろう!と気合を入れる時や、ひとりの時間に味わいたいのが、sweets nicoのお菓子だ。
作り手の改田聡子さんは母親の影響で、幼い頃から菓子作りを始め、中学時代の部活では毎週土曜日にクレープを振舞っていた。15年前、その味を覚えていた同級生が「身体に良い素材でお菓子を作ってほしい」とオーダーしたことが、sweets nicoを始めるきっかけになる。
ある企業からオーガニックシュガーのサンプルを取り寄せたところ、それまでの菓子が格段においしくなることを知った。1キロ以上届いたサンプルのお礼に菓子を送ったところ、販売したいので菓子製造業の許可を取ってほしいと依頼され、自宅の改築に踏み切った。店舗を持たずに受注やイベントでの販売にした理由は、2人の息子のバスケットボールクラブへの送迎を優先させたかったからだ。
国産小麦、オーガニックシュガー、平飼い有精卵など厳選素材で作るお菓子のファンは多い。「お客さまに喜んでもらえた時に大きな幸せ、自分の存在価値を感じられる」と改田さん。最近は茨城県高萩にある結農実WORKSの無農薬栽培のほおずきでタルトを作った。「甘酸っぱくて、あんずよりもさわやかです」とのことだ。試行錯誤の末、中心部分に栗の渋皮煮を入れたシュトーレンも好評だ。
モノづくりにはその人の感性が表れる。子どもの夢をサポートしながら自分の菓子作りを続けてきた改田さんの人生と、シュトーレンの奥深い味わいが重なった。
(2022年1月号掲載)
※現在、我孫子おはよう農園の平飼い卵を使用 ※毎週金曜日に湖北のsu3caで喫茶メニューを提供
そのショートケーキに出合ったのは数年前のこと。誕生日に家族が買ってきてくれ、一口食べたときの衝撃は今でも忘れられない。しっとりとしたスポンジ生地に上品な甘さの生クリーム、いちごの酸味がアクセントとなり、口の中でみごとに調和していた。それ以来、すっかり虜になってしまったお店こそ、天王台駅から徒歩2分の場所にある「パティスリーアビニヨン」だ。 現オーナーシェフである坂本昌子さんのご両親が、1980年にパンと洋菓子の店としてオープンしたのがはじまり。坂本さんは製菓学校を卒業後、東京のパティスリーを経て渡仏。2年半にわたってフランスのパティスリーと製菓学校で働いた後、両親からこの店を引き継いだ。
ブルーの扉を開けると、フランスの田舎を思わせるアットホームな店内。ずらりと並んだ伝統的な焼き菓子と見た目にも美しいケーキに心が躍る。 坂本さんのおすすめは、フランスで働いていたときに出合ったケーキを再現したという「タルトカフェ」(540 円)。バターの香りとサクサクとした食感のタルトの上にコーヒー風味のガナッシュとムースを重ねた、シンプルだけれど深みのある味わい。秋口に登場する「キャラメルポワール」も人気が高い。
「心がけているのは、トータルのバランスを考えた素材選びと、旬のフルーツや季節のものを取り入れること」。いちごは柏と取手の農家さんに直接足を運んで厳選し、農家さんとはすでに10年近い付き合いになるという。
そんな坂本さんが作るお菓子は、確かな技術に裏打ちされた芯の強さと、家庭的な愛情の両方を感じられる。大人から子どもまで惹きつけてやまないお菓子が生む心のトキメキを、ぜひ体感しに足を運んでみてほしい。
(2024年9月号掲載)
2019年4月発行の『まち活マガジンNo.1』から連載が始まった「あびこのおいしいみーつけた!」。当初はあびこ市民活動ステーションの片岡が担当し、2023年9月号からは、まち活ライター(※1)の寺田さおりさんを執筆者に迎え、より取材先の幅が広がりました。2人はどんな観点で取材店を選んでいるのか?我孫子の飲食店の魅力などを聞きました。
料理上手な母と外食好きな父(今思えば家族サービス!?)のお蔭で、幼少期から舌を磨く。
20 代から30 代半ばまで、料理人の協会の会報誌でさまざまな料理人へのインタビューを経験。結婚してから料理を始め、求めた味が創り出せた時は最高の気分。外食頻度が減ったからこそ、店を選ぶときは真剣そのもの。一児の母。
千葉県の海沿いの町で育ち、根っからの食いしん坊。書く・撮るはライフワーク。編集者・ライターとして食(一次産業も含む)、工芸、ものづくり、地域などをテーマに取材・執筆を行っている。フードスタイリストとして料理撮影でのスタイリングを手がけることもある。“暮らす“も“はたらく”も楽しみたい二児の母。
お店を選ぶポイントは?
料理、お菓子、パン、ドリンクなど「手作り」するものには、人間性がとてもよく表れると思っています。私が紹介したお店は、おいしいだけでなく、人柄もとても良い方々なので、また会いたくなるし、また食べたくなるのです。
実生活で好きで通っていたお店だったことと、取材前に一利用者としてお店に伺ってみて、「ぜひもっと多くの人に知ってもらいたい!」と思ったことがお店を選んだ決め手でした。
取材した中で印象的だった店の小話は?
開店20年のタイミングで取材したビストロ・ヴァンダンジュは、私が20 代の頃よくカウンター席でひとりフレンチを楽しんだお店。「1か月で包丁を握らない日は一日程度」というシェフに、プロフェッショナルを感じると共に、これからも我孫子を代表するお店であってほしいと思いました。コ・ビアンは以前創業者の小熊覚三郎さんにインタビューしたことがあり、お孫さんの啓太さんが「100 周年を目指す」と話すのを聞いて、感慨深かったです。
どのお店もエピソードがたくさんあり、毎回原稿にまとめたり、削ったりするのに苦労します。パティスリーアビニヨンさんの取材で、どんなお客さまが多いのか伺ったら、夕方は意外と会社帰りのサラリーマンの方が多いことと、70代くらいの男性のお客さまが奥様の誕生日にケーキを注文されていくことを聞いて、想像しただけで微笑ましかったです。
取材した中で感じた我孫子の飲食店の魅力とは?
我孫子には、小さくても粒ぞろい、オンリーワンの個性が光るお店がたくさんあります。自分のライフスタイルに合わせて無理なく営業されているお店も多く、開店日数が少ないからこそ、お客はそこを目がけて行く。約30分に一本しか運行しないJR成田線にも重なるような気がします。
柏市や取手市など近隣地域も含め、田畑や自然が多く、食材に恵まれた土地なので地元産の野菜やくだものを使っているお店が多いことが印象的でした。売り場面積やお店の規模は大きくなくても店づくりや商品一つひとつに世界観がギュッと詰まっていて、店主さんの個性がにじみ出ているような「ここにしかないお店」が多いところも魅力です。
(※1)2022年、23年にあびこ市民活動ステーションが開催した養成講座の修了生の通称。あびこの魅力を発信する市民ライターとして「書くこと」でまちを活性化していく。24年からは、広報あびこの毎月16日号に掲載の「あびこみっけ」を好評連載中。
「あびこのおいしいみーつけた!」の連載が始まった時はライターだった片岡も、現在は市民活動ステーションでコーディネーターをやっています。そして、赤い電動自転車に子どもを乗せて走る中で見つけたおいしいお店を紹介していましたが、46歳で車の免許も取得しました。
時は移り変わります。今回総集編を作るにあたり、振り返ってみると残念ながら閉店したお店もありました。取材した時のお店の方との会話は私の血肉となりました。原稿に残せたことは宝です。
読者の皆さまからの「掲載されたお店に全部行っています」「今度このお店を取材してください」という反響が一番の喜びです。これからも我孫子のお店をどんどん利用して、どんどんお金を落として発展させましょう♪あなたの「おいしい」お店もぜひ教えてくださいね。
出会いを食べるライター 片岡 綾
発行:あびこ市民活動ステーション 【2024.11発行】
〒270-1151 我孫子市本町3-1-2 けやきプラザ10F
TEL:04-7165-4370
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