行政書士・ビジネスマインドコーチとして経営者・起業家の支援を行う木川さんが考える、起業家にとって大切なこととは

我孫子で行政書士事務所を開業して23年。木川敏子さんが手がける業務は、会社設立・許認可申請などの法人法務から、遺言・相続などの民事法務まで多岐にわたります。近年は「ビジネスマインドコーチ」として経営者・起業家の支援を行っています。また、我孫子を拠点にコミュニティビジネス活動を行うNPO法人ACOBA（アコバ）の代表理事も務めています。今回は長年、多くの事業家やビジネスの現場に関わり続けてきた木川さんにお話を聞きました。

もともと主婦として家にいるよりも外で人と関わることが好きだった木川さんですが、30代も終わるころ、自分でも経済力をつけたいと行政書士の資格を取得しました。1999年のことです。最初の1年半は先輩の行政書士事務所で修業をし、業務のスキル、お客様への対応の仕方、役所との交渉術など行政書士としての在り方・姿勢を多く学んだそうです。

地域での活動を広げるきっかけは、事務所を開いて間もない頃に受講した我孫子市主催の「コミュニティビジネス講座」でした。コミュニティビジネスとは、地域課題の解決をビジネスの手法で取り組むもの。「ビジネスと名が付いているし、自分の仕事にも役立つのではないかと思ったんです」。無償ボランティアではなく、利益だけを追求する事業でもなく、地域の課題を解決することで対価を得るコミュニティビジネスは、1990年代から現在まで注目を集めています。「ボランティア活動であっても、しっかり継続し、成長させていくには経済的な基盤が必要ですよね。また、きちんと対価を受け取ることは関わる人たちのモチベーションを上げ、地域の活性化につながります」と木川さんは話します。

コミュニティビジネス講座の卒業生で2005年に立ち上げたのがNPO法人ACOBAです。現在、ACOBAでは、千葉県福祉ふれあいプラザの指定管理者業務、福祉サービスの第三者・外部評価業務、国の休眠預金活用事業における資金分配団体としての業務、地域の高齢者を対象としたコミュニティ活動、ホームサービスなどの事業を行っています。木川さんが担当するのは「地域ビジネス支援事業部」で、毎年、我孫子市の委託を受けて実践創業塾の企画・運営を行っています。さらに地元の事業者を対象にした相談窓口も設けています。

実践創業塾で講師を務めるため、ご自身もマーケティングやセールスを学び続けるなか、木川さんが3年前に出合ったのがコーチングでした。コーチングとは相手の話に耳を傾け、質問やときに提案などをして、相手の内側にある答えを引き出す、目標達成のためのコミュニケーション技術のこと。コーチングを受けるなかで自分自身を見つめ直す機会になったのだそうです。「本当に自分がやりたいことは何だろうということを突き詰めて考えさせられました」。

そこから今度は木川さんがコーチングを提供する側となり、対話を通じて経営者・起業家の現状突破のサポートをする「マインドコーチ」としての活動にも力を入れるようになりました。お客様から求められるのはマーケティング、セールス、集客などのノウハウの部分も多いですが、実際にお話を聞くと、多くの人が必要としているのはマインドの部分なのだそうです。「特に女性の起業家の方は自信がない人も多いです。聞けばたくさんの資格を取得していらっしゃるんですけどね。『いやいや私なんて』と最初からあきらめている方が多いのです」と木川さんは話します。

これまで数多くの起業家のサポートを行いながら、ご自身も事務所を経営する木川さんに、起業家にとって大切なことを伺いました。

「起業家にとって特に大事なことは、自分との約束を守ること。そして、約束を守れたときには自分で自分を褒めてあげることです。実はこれ、自分の職業人生で十分にできなかったと後悔していることでもあるんです。自分のことを後回しにして、お客様を優先、家庭を優先してきました。もちろん達成感や自己満足は感じていたのですが、ある日ふと思ったんですよね。あれ、自分のこと忘れてたって。

だから、まず自分にどんな約束をしてあげるか、それを考えてみてください。どんな自分になってほしいの？どうなったら幸せなの？それを叶えてあげるのは自分しかいないよ。頑張ってるよね。えらいよね、という自分との対話を大切にしてほしいと思います」。

最後に、木川さんに今後の夢をたずねると「少しでも多くの起業家と出会い、彼らが羽ばたく姿を見届けたい。それが一番の夢です」と話してくれました。今回の取材を通じて、起業家の伴走者として、木川さんが第一線で活躍し続ける所以を垣間見ることができました。

（取材・文／寺田さおり）