まち活マガジン2022年8月号(No.23)


食が紡ぐ関係から、地域づくりへ

「食」をテーマに地域の役に立ちたいと、おいしいものを食べること、
料理が好きな人が集まった。我孫子の食材を活かし、楽しみながら
研鑽を重ねている。食が紡ぐ関係が、誰もが活き活きと暮らす
地域づくりへとつながっていく。

写真提供:NPO食の会あびこ

Contents.
まち活団体紹介
NPO 法人 NPO 食の会あびこ
あびこのおいしいみーつけた!
Bistro vin dange(ビストロ ヴァン・ダンジュ)
我孫子 白樺派のカレー物語
第2話 ことの始まりは貴重な出会いから
つなぐ人~コーディネーターより~ 野際里枝
「プロボノ」という考え方はいかがでしょうか


市民のチカラまつりでのポリ袋クッキング

 昭和62年に結成された「ふれあい弁当の会」に始まり、その有志12人で立ち上げた「配食グループふれあい」の事業を経て、食を通じた研鑽グループとして地域とのつながりを大切に活動している「NPO 食の会あびこ」。 代表の牛尾眞志さん、初期からのメンバーの山東かよ子さん、新しいメンバーの西館和さんの3人にお話をうかがった。

Q:現在の活動についてお聞きします。

牛尾:月に1回例会を開いて、3か月に1回、テーマを決めて実際に作る料理研修をやっています。伝統的な料理を見直すということで、江戸時代の『豆腐百珍』の中から作ったり、おせち料理や会津のこづゆなど。また、高齢者に役立つレシピを考えてきました。年末にはクリスマス・ブーツを20 ~ 30個焼いて、福祉施設・公共施設にプレゼントしています。

Q:コロナ禍になってからの活動はいかがですか。

牛尾:ここ2年は通常の活動がほとんどできませんでしたが、できることは何かと常に考え、活動は休みませんでした。コロナでも役立つものとして、調理具を使わず、熱湯消毒もできるポリ袋クッキングの活用を考えました。一昨年の市民のチカラまつりでもやらせてもらいました。5月には、国際情勢が不安な中、食料事情が厳しくなった時に役立つ食材を考え、おからを取り上げました。おからは植物性たんぱく質ですし、江戸時代から食べられている食材です。
山東:メンバー1人が3 ~ 4 品ずつ作りました。スープ、おからサラダ、行田の「ゼリーフライ」、ハンバーグ、コロッケ、クッキー、クレープ、ちぢみ、ふりかけなど、バリエーションに富んだ料理ができました。
西館:ひき肉におからを加えて、マーボー豆腐も作りました。どれもおいしかったです。

バラエティ豊かなおから料理

Q:メンバーについて教えてください。

山東:メンバーは今13 人、若い人で50 歳代、ほとんどが70 歳代です。毎月の例会参加人数は10 人くらい、仕事のある人、体調の悪い人以外は参加します。食べることが好きで、みんな食に興味を持っているのでお互いに勉強になります。コロナの影響でコホミンの調理室で試食ができませんでしたが、早く「おいしいね」、「ここ苦労したね」など言い合いながらコミュニケーションできるようになりたいです。
西館:「風庵」という居場所があるから、集まりやすいです。情報交換もできるし、居心地がよくて楽しいです。

Q:会費はどれくらいですか。

牛尾:月200 円、年にして2,400 円です。その他に、調理実習をやる時の食材費は、かかった経費を参加人数で割って負担します。以前の会費は月500 円、年6,000 円だったのですが、これから会員を増やしていこうと思った時に、参加しやすい会費に下げた方がいいと思い変えました。基本は会費(収入)と支出がイーブンになればいいと考えています。

クッキー作り

Q:これからはどんな活動をやっていきたいですか。

牛尾:ポリ袋クッキングは、1回覚えると簡単にできるので高齢者や料理に不慣れな人も取り組めます。災害時にも活用できるなど汎用性が高いので、今後もメニューを増やしたり、いろいろな所に広げたいと思います。新しい食材の食べ方を勉強して広めること、お年寄りでも作れるレシピの開発も続けていきたいと思います。また、地域の子どもと大人が気軽に集まれる「コトナ(子ども・大人)食堂」もやりたいですね。ワンコイン持って来ると、カレーやサラダが食べられるような。
山東:新しいメンバーも増やしたいです。

Q:まだやりたいことがたくさんあるのですね。皆さんの熱意を感じさせられます。

牛尾:皆さんスキルがあって、研究熱心です。
山東:自分が住んでいるところで人のお役に立てればと考えているので、食をテーマに地域の人と活動できてうれしいです。私は料理が好きというより食べることが好きなので、この会に来ると同じ思いの人がいて、知識の交換もできて楽しいです。
西館:私も食べることが好きです。参加することで情報が得られるし、地域とのふれあいができていいなと思います。
牛尾:昔キャンプでカレーを作っていた時に、カレー・ルーをみそに変えたら豚汁になる、、しょうゆに変えることもできる、料理は無限のかけ合わせでできていると気づきました。それ以来、料理への興味が深まりました。料理はむずかしくないし、作るのに男も女も関係ないと思います。

Q:地域と連携して行うことが多いようですね。

牛尾:はい、自分達だけでなく、どこかと一緒にやるようにしています。農家の人に料理教室に来てもらったり、会津こづゆを作った時は地産地消推進協議会とコラボしました。「あびこん」さんとも、いろいろ連携して行きたいと思っています。市民のチカラまつりへも、地域とのつながりという意味で参加しています。これからも地区社協やまちづくり協議会など、地域の皆さんと一緒にやりたいですね。「美味しさは楽しさ」をモットーに、食を通じてできることからやっていきたいと思います。

「NPO食の会あびこ」の皆さんは、自分の最も好きなこと、得意なことを活かして地域貢献するということを、ごく自然に行っている。食べるのが好きで、美味しいものを作るのは楽しい、その美味しさを地域の人達と分かち合い、さらに楽しくなろうとしている。このような会の姿勢が、地域で暮らすしあわせ感を醸し出していることを感じ、心が暖かくなった。

お話を聞いた方々(左から山東さん、牛尾さん、西館さん)

我孫子で“成人式” を迎えたフランス料理店
Bistro vin dange(ビストロ ヴァン・ダンジュ)

シェフが厨房から見渡せる全15席
料理のスタートが楽しみになる前菜盛り合わせ

 友人が我孫子に遊びに来る際、私は我孫子駅北口側にある南フランス料理とワインの店「ビストロ ヴァン・ダンジュ」に案内する。「おいしい!」と「お腹いっぱい!」を言ってもらえる自信があるからだ。お店は今年4月に開店20周年を迎えた。5 人の調理スタッフが独立し、オーナーシェフの小原健さんは、約5 年前から店の規模を縮小し、一人で厨房に立つ。15 年以上働くベテランのパートさんたちに支えられている。
 料理、パン、デザートまですべて手作りのため、店舗休業日も仕込みをし、365日ほとんど店にいるという小原シェフ。コロナ禍もテークアウト需要で忙しいが、最近は月に1日だけ包丁を握らない日を作り、リフレッシュしている。調理スタッフの人件費がかからない分を食材費に充て、値が張っても良質なものを仕入れてお客さまに還元する。「我孫子は舌が肥えている町。もっといいワインある?食材もいいのある?というお客さまの声に育てられました」。
 30 歳で独立した小原シェフも今年で50 歳になった。「まじめにやっていれば続けられるんだ、というのが実感です。経験が増えた分やりたいことはいろいろあるけれど、全部はできないので、毎月目標を決めてやることにしています」と語る。現在、我孫子市内にゆったりと食事とお酒を楽しんでもらえる場所を探している。「手賀沼がチラッと見えて、理想は、1日に昼2 組、夜1 組。景色を眺め、飲みながら、半日くらいゆっくりしてもらえるような店にしたいですね」。良い場所が見つかれば、豊かな自然と共にある“我孫子リゾート”の楽しみが、一つ増えそうだ。

「デザートを作れる方を募集しています」と小原健オーナーシェフ
食べるライター 片岡 綾

おいしいものを探して自転車で街を駆け巡る日々の中、我孫子の食の豊かさに開眼。「食べるために生きる」がモットーの40代一児の母。


白樺派文人達の足跡を新たな角度から考えようと
柳宗悦夫人、兼子さんのカレーが再現されました。
誕生のエピソードや普及の過程について、
知ればさらに味わい深くなるお話を4 回シリーズで紹介します。

第2話 ことの始まりは貴重な出会いから

 2005(平成17)年のこと、NPO法人テラスあびこ(渡邊毅理事長、当時、現NPO法人テラス21)が主催した“公園坂通りデザインコンペ”で、「白樺派のカレーでまちおこし」企画が白樺文学館賞を受賞したのでした。白樺派のカレーはここから動き始めたのですが、実はそこから遡ること4年、白樺文学館にその萌芽があったのです。

 今から約100年前に、我孫子で生まれたカレーを再現しようという試みがそれでした。大正末期に民藝運動の柳宗悦の夫人で声楽家の柳兼子さんが、我孫子で作っていたカレーのことです。その時のことを兼子さんが雑誌『民藝』(昭和54年8月発行)に載せたのでした。随筆「思い出すままに」という題名で、その中にバーナード・リーチが兼子さんに「カレーに味噌を入れたらおいしくなるよ」と助言していて、その通り作ったらおいしいカレーができたという話です。
 この話を白樺文学館が食の専門家である石戸孝行さんに伝え、そこから石戸さんの「兼子さんのカレー考証」への挑戦が始まったのでした。その日は2001年8月10日、石戸さんの研究と試行錯誤が始まり、数年間に亘り年1回兼子さんのカレーの試食会が行われていたのです。
 石戸さんの研究成果と冒頭の「白樺派のカレーでまちおこし」企画がドッキングして、さあ愈々「白樺派のカレー物語」は、次号以降に佳境に入ります。
 余談ですが「白樺派のカレーの日」というのがあります。前述の歴史的スタートの日、2001年8月10日を記念して、毎年その日を「白樺派のカレーの日」として、コロナ禍以前は色々な催しを行っていたものでした。今号が発行される頃には何か記念イベントが始まっているかもしれません。


 社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門知識を活かして取り組むボランティア活動のことを「プロボノ」と言います。今、仕事をしながら「学び」や「スキルアップ」の場として「プロボノ」を進める企業が増えています。働き盛り世代の地域参画はなかなか難しいなぁと感じている方、「プロボノ」という考え方はいかがでしょうか。(野際里枝)
施設利用のご案内 我孫子で活動を「みつける」「はじめる」お手伝いをしています。
■開設時間 9:00-21:00
      17時以降は予約のみ開館。17時以降のご予約は2日前までにお願いします。
■休館日  毎月第2・4月曜日 祝日は開館270-1151 我孫子市本町3-1-2 けやきプラザ10階
Tel・Fax 04-7165-4370
https://www.td-f.co.jp/abikosks/
abikosks@themis.ocn.ne.jp
 
まち活マガジン あびこ市民活動ステーション情報紙No.23
発行日:2022年8sadfsx月1日/発行元:あびこ市民活動ステーション[指定管理者:(株)株式会社東京ドームファシリティーズ]
デザイン・レイアウト/人を通して障害を識るフリーペーパー「gente」編集長 大澤元貴
PDFは、上の画像をクリックするとご覧いただけます。

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